一之輔が受けた一番くだらない「とばっちり」 前座時代の出来事 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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一之輔が受けた一番くだらない「とばっちり」 前座時代の出来事

連載「ああ、それ私よく知ってます。」

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春風亭一之輔週刊朝日#春風亭一之輔
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『春風亭一之輔のおもしろ落語入門 おかわり!』(小学館)が絶賛発売中!

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『春風亭一之輔のおもしろ落語入門 おかわり!』(小学館)が絶賛発売中!

イラスト/もりいくすお

イラスト/もりいくすお

 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「とばっちり」。

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*  *  *
『とばっちり』とは、本来「飛び散った水」のことだそうな。

「うちの弟子いる?」。昼の部の開演前、新宿末廣亭の楽屋の電話が鳴った。一番下っ端の私が出るとA師匠の声だった。『うちの弟子』とはB兄さんのことだ。「まだ入ってません」。いつも入りの遅いB兄さんが入るのはもうちょっと先だろう。

「またかけます、忙しい時間にごめんね」。気のせいか、いつも温厚な師匠の声はピリッとしていた。開演の準備を続ける私。お湯を沸かし、座布団を並べる。火鉢に火をおこす。末廣亭の楽屋の真ん中には火鉢があり炭で火をおこすのは、冬場の前座の大切な仕事だ。いつもドジなB兄さんはなぜかこれだけは上手い。火おこしにてこずっていると、C兄さんが入ってきた。「A師匠から電話ありました。B兄さん、いるかって」「あー、あいつ今日彼女とディズニーランド行くって言ってたな」とC兄。前座が師匠に内緒で寄席を休むのは御法度。非常にリスクを伴うので事前に口裏を合わせておくのだ。「またかけるって言ってましたけど、どうします?」「とりあえず様子見だな」

 30分後、再びA師匠からの電話。受話器をとったC兄が戻ってきた。「お使いに行ってます、って言っといた」「怒ってませんでしたか?」「いやー、いつもどおりだったよ」。15分後、また電話。今度は私が出た。「まだ帰ってこない!?」「はい、すいません!」「いや、君が謝ることはないけどさ! じゃあ帰ってきたらウチに電話させるように!」。けっこうイラついている。「マズいなあ。あいつピッチ出ねえし」とC兄。その頃はまだPHSなるものがあった。非常事態を知らせても夢の国に居るB兄さんには届かない。


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