退職後、検診でがんが見つかり、10カ月の闘病生活へ。抗がん剤の苦しみをあまり言わずに亡くなっていきました。

 この何年も夢に出てこなかった主人が、最近になってよく出てきます。残業帰りのあの場面を思いだし、胸がキューンとなって、もう一度会いたくなり、涙が出るのです。

 でも、ある日、いろいろと整理をしていたら、現金20万円が出てきました。洋服タンスもすべて片づけましたら、隅からシャネルの香水が出てきました。ネクタイなどすべて私が用意してきたのに、香水とは!!

 私が全く気付かなかった女性からの物でした。私には全く素ぶりを見せなかったのです。そんな女性との楽しい思い出があったなんて。今になれば、全くノー天気な妻でした。

 私の毎朝の般若心経。聞こえていますか。そちらに行くのはひ孫の顔を見てからにします。もう少し待っていてくださいね。

週刊朝日  2019年11月29日号