ツッコミ的なスタンスのAさんなのだから、明らかに不自然になってしまっている自分の顔を自らツッコんでくれればよいのだが、その空気はない。僕はその人はとてもバランス力のあるタレントさんだと思っている。客観的目線が武器のはずのAさん、自分のことだけは客観的になれずにバランスを崩してしまったのかなと思う。

 僕は言葉の力ってすごいと思っていて。「イケメン」という言葉ができてから、女性が、人前でも男性の顔を格付けすることがカジュアルになったと思っている。なので、整形とは違う言葉。たとえば、これも女性誌では使われているが、メンテナンス。誰だって年は取るし、綺麗にしたいっていうのは当たり前のことである。だから、もっとメンテナンスみたいな言葉で、年を取ってきてからの整形がもっとカジュアルになったらいいなと思う。そうしたら、バランスを崩す人も少ない気がする。

 そして、「麻痺」してやりすぎになった場合も、注意できる気がするんですよね。「ねえ、さすがに、最近、メンテしすぎじゃない?」みたいなノリで。

週刊朝日  2019年11月29日号

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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