元英領ビルマ総督府・セクレタリアートの南館は1893年完成のビクトリア様式建築 (撮影/石井真弓)
元英領ビルマ総督府・セクレタリアートの南館は1893年完成のビクトリア様式建築 (撮影/石井真弓)

 経済発展の中、歴史的建造物を保存する活動が行われるヤンゴン。街を歩いて、ミャンマーに吹く時代の風を感じとる。

【写真特集】歴史をたどる旅 ミャンマー・ヤンゴンの建築遺産

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 ミャンマー(ビルマ)最大の都市、ヤンゴン市には現在、日本企業も関わる開発の波が押し寄せ、新しいビルがどんどん建っている。

 一方、イギリス植民地時代(1886~1948)の頃の歴史を刻む建物が壊されることに反対の市民もいて、2012年に、歴史的建造物の保存、修復を目的とするNGO「ヤンゴン・ヘリテージ・トラスト」(YHT)が設立された。市政府にも働きかけて啓蒙を精力的に行い、旅行者もその活動に触れることができるしくみだ。

 YHTの街歩きツアーのガイドと一緒に市内の「権力の椅子」というコースを歩いた。ヤンゴン川近くの地区に残る英国建築の数々の歴史を聞きながら、やがて大きな建物群に到着した。1900年代初頭に建てられた元英領ビルマ総督府、セクレタリアートだ。長く非公開だったが、修復されて2019年に博物館として公開された。ここはアウンサンスーチーさんの父、アウンサン将軍が活動していた場所だ。1947年に彼が暗殺された部屋の内部もガラス窓越しに見ることができ、ミャンマーの時代の変化を感じたのだった。(文/石井真弓)

週刊朝日  2019年11月15日号