「こう見られたいとかいう自意識はないんです。そんなに隠すような、価値のあるものなんて持っていないんです。役者をやっていると、芝居が上手いとか下手だとか、いろんな意見が耳に入ってきますけど、そもそも自分の中には芝居の技術なんてものはないと思う。ただ、人に判断してもらうために、自分の中にある材料は、できるだけたくさん出すようにしています。演劇って、趣味でやっている大人の人もいるくらい、憧れを持たれる職業だったりするし、それでお金をいただいて生活できているのは有り難いこと。でももし自分がサラリーマンで、これだけいろいろギャンブルにハマっていたりしたら、社会不適合者の烙印を押されていてもおかしくないわけで(笑)」

 ギャンブルで借金を作った時は、大変な思いもした。でも、今もギャンブルからは完全に足を洗えていない。「この間も、どうしてもパチンコがしたくなって、45分だけしました」とニコニコしながら話す。

「ギャンブル場に行くと、そこでしか生きられない人たちが大勢いるんです。僕も数年間、パチンコしかしていない時期があって、毎晩居酒屋で反省会をするんですが、そこに集まるおっさん、兄ちゃんたちとの出会いは、素晴らしい経験でした。刹那的に生きている、一般的には“クズ”と言われている人たちと酒を飲むというのは、楽しかったですよ。(パチンコの)台の話、回転数の話、釘の話しかしない。そんな日常(笑)。ギャンブルって、普通は勝つためにやっているんだろうけれど、実は勝つのも負けるのも、快感はある。堕ちていく快感というのも素晴らしい(笑)。全てを失った時の、絶望的な快感。それはとっても気持ちよかったりするんです」

 今は、忙しくすることで、ギャンブルとうまく付き合っている。

「お酒は、毎日飲んでいますけど、依存まではしていません。依存というのは、人生を破滅させるところまでいくものを指すから、いくら好きだといっても、芝居や鉄道やギターはそれに当てはまらないですし(笑)」

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