三年連続「首」骨折のリハビリ中に…作家・下重暁子の気づき
連載「ときめきは前ぶれもなく」
押しつけがましくない言葉もうなずけた。
そんな中でふと気付いたときめき。何の前ぶれもなくやってきた。まだまだ捨てたもんじゃない。冬の名残りの薔薇は、朽ちていく中だけに、いっそう美しい。
いまこの庭に
薔薇の花一輪
くれなゐふかく咲かんとす
彼方(あちら)には
昨日の色のさみしき海
また此方(こちら)には
枯枝の高きにいこふ冬の鳥
こはここに何を夢みる薔薇の花
いまこの庭に
薔薇の花一輪
くれなゐふかく咲かんとす
高校生の時、耳から憶えた三好達治の詩が浮かんできた。あの頃の純粋な想いに顔赤らめる。
私の中のときめきをこっそり育てながら、ときめきを食べて生きてゆきたい。
※週刊朝日 2019年11月8日号
下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。主な著書に『家族という病』『極上の孤独』『人間の品性』ほか多数
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