この商品については、消費者個人に代わり、不当な契約などの差し止めを請求できる国認定の適格消費者団体、京都消費者契約ネットワークが9月、京都地方裁判所にお試し価格表示差し止め請求の訴訟を提起した。

 こうした「定期購入」に関する相談件数は急増している。日本通信販売協会によると、今年4~9月には269件と前年同期に比べ5割増となった。消費者相談室長の石川康博さんはこう話している。

「入れ代わり立ち代わり、新しい業者が登場してきます。相談の多いネット広告の販売画面は共通している部分が多く、同一の広告会社のコンテンツを利用している可能性があります。従前から定期購入によるお届け制度はありますが、その手法をネットやスマホに取り入れ、巧妙な広告展開で申し込ませるものです。この売り逃げ的と思われる販売手法によって多くのトラブルが発生しています。当室以外にも消費者相談機関には非常に多くの相談が寄せられていると報じられています。なんらかの対策が求められています」

 景品表示法には「不当な表示の禁止」という条文がある。こうした問題に詳しい長野浩三弁護士は、

「一般人を基準にして誤認するかどうか」

 がポイントと指摘する。景品表示法は「一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引」する表示を禁じている。消費者が誤解するような健康食品などの広告で売り逃げを狙った悪質業者に対しては、景品表示法により取り締まり可能と長野弁護士は考えている。

 だが、関係当局の対応は進んでおらず、悪質業者は後を絶たない。消費者庁の担当者は「我々は小所帯でやっていて、人数が足りません」と話す。

■まず「青汁王子」 悪質業者次々と

 ある業界関係者は、悪質業者が出てきたきっかけとして「青汁王子」を挙げる。

 広告表示の差し止め請求訴訟を起こした適格消費者団体の消費者被害防止ネットワーク東海によると、青汁王子の事例はこうだ。

 有名人がブログなどに、「青汁・初回限定630円(80%OFF)」と広告を出す。見た人が広告をクリックすると、630円が強調されているため気軽に申し込んでしまうのだという。

 実際は小さな文字で4カ月(4回)以上の購入となっており、2カ月目は3480円。しかも、解約したくても電話がつながらず、青汁を購入してしまうことになる。

 別の業界関係者によると、お試しのつもりが実際は定期購入で、4カ月分まで購入させる事業モデルは青汁王子が作った。すると、後から同じような業者が次々と出てきたという。

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