この指摘は、米国批判としてはおもしろい。ところが、その米国で「民主主義などくそくらえ」という大統領が登場した。
ドナルド・トランプである。
それまでの米大統領は、いずれも「米国の役割は世界の秩序を正すこと」だと強調してきたのだが、トランプは堂々と「世界のことなど構わない。米国第一主義」だと言い切って大統領に当選したのである。
これまで、米国は世界の犠牲になってきたために経済は惨憺(さんたん)たる状況になった。米国を立て直し、ふたたび偉大な米国にする、というのである。そして、イスラム教徒たちの入国の禁止を図り、メキシコとの国境に大きな壁をつくるなどと宣言した。
さらに、トランプの意見に従わない長官などを次々に解雇した。ティラーソンもマティスも解雇された。気に入らないハト派を解雇するのかと思ったら、タカ派のボルトンも解雇してしまった。つまり、気に入らない人間は誰かれ構わず解雇してしまうのである。
そして、トランプ流の自国中心の反民主主義的リーダーが登場するのが、世界の流れになっているようだ。イギリス、トルコ、イラン、イスラエル、ロシア、中国はもちろん、このところトップに当選するのは、アジア各国でも反民主主義者で、民主主義を守ろうとする独メルケルや仏マクロンは大苦戦している。この流れをどう捉えればよいのだろうか。
※週刊朝日 2019年11月15日号