「新作を作曲し、レコーディングしているときは、頭の中でお客さんの顔や反応を想像しながらピアノを弾きます。コンサートでは、そんなお客さんたちとリアルに対面できます。自画自賛ですが、新しいアルバムのタイトル曲『Spectrum』はとてもカッコいいと思えました。やはり新作に『ラプソディ・イン・ヴァリアス・シェイズ・オブ・ブルー』という22分を超える組曲があります。どの街でも客席がどんどん高揚していくのがわかりました」
この曲はジョージ・ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」、ジョン・コルトレーンの「ブルー・トレイン」、ザ・フーの「ビハインド・ブルー・アイズ」がモチーフ。ポピュラーで、クラシックで、ジャズで、ロックでもある大作だ。
「演奏中も客席から拍手をいただき、声援が飛び交い、20分あたりから客席との一体化を感じました。演奏する私だけでなく、会場にいる全員で曲のゴールを迎えられている感覚です」
弾き終える度に胸にこみ上げるものを感じた。
「私、生きている!」
そう自覚し、スタンディングオベーションに応えた。
「今回はソロピアノなので、バンドのツアーとは違って、お客さん全員が私の演奏だけを聴き、鍵盤を叩く指に注目しています。客席の全員と1対1で向き合っているような緊張感を毎夜体験できています」
この後、ひろみはアメリカ東海岸へ渡り、アトランタ、フィラデルフィア、シカゴ、ボストン、プリンストン、ニューヨークで公演を行う。そして、またヨーロッパへ。ハンガリー、オーストリア、イギリス、チェコ、スイス、イタリア、オランダ、ドイツ、フランスをまわる。
「フランスの後帰国して11月17日からいよいよジャパンツアーです。楽しみにしていてください」
(神舘和典)
※週刊朝日 2019年11月8日号