その一方で、もどかしさもあるという。

「売れる(業務用の引き合いが強い)のに、作り手が増えない。生産者たちが『あきたこまち』一辺倒のところがあるので、偏りが取れないという現実がある」

 この「ゆめおばこ」をおいしいからと仕入れ、店頭販売したのが「石うす屋中村米穀」(名古屋市)だ。同店の五ツ星お米マイスターの中村公一さんは、こう話す。

「『あきたこまち』よりもうまみが飛び抜けているし、はるかにおいしいと私は感じたんです」

 仕入れ価格は「あきたこまち」よりも高かった。当地比で化学肥料を90%、農薬を50%減らした特別栽培米で、日本穀物検定協会の食味ランキングで特A評価のものだ。記者が取材した日はちょうど在庫切れだったが、店頭価格を見ると、「あきたこまち」は1キロあたり480円(税込み、以下同)に対し、「ゆめおばこ」は580円だった。

 価格を抑えつつ、おいしいコメを食べたい人向けには、多収米「あいちのかおり」が5割以上入ったブレンド米「僕たちの夢」(1キロあたり390円)も販売している。

 目的や状況に合わせておいしいおコメをいつも食べられたら、それはそれは幸せなこと。価格が安ければなおハッピー。美味な多収米に期待したい。(本誌・大崎百紀)

週刊朝日  2019年11月8日号