SNSなどの影響で、世代や分野、比較的狭い範囲で爆発的に流行する言葉も増えている。

「“タピる”が若者の間でブレークしましたが、おじさんや高齢者には縁遠い話。ヒット曲やお笑いのフレーズも、若い世代だけの現象ですし、話題や流行の分断化が進行し、ハーモニーとはほど遠い状況ですね」(西川氏)

 昨年亡くなった“樹木希林さん”の言葉や生き方を記した本が何冊もベストセラーになったことも、印象的な現象のひとつだった。

「いまの息苦しさ、生きづらさとの対比になっているのかもしれませんね。ひとつ間違えるといっせいに叩かれたり攻撃されたりするところで生きている我々は、世の中の常識や縛りとはまた違ったところで自由に生きてこられた樹木さんに、そんなささいなことは気にしなくていいのよと言ってほしい、そんな思いもあったのではないでしょうか」(石原さん)

 そんななか、ビューティフルでハーモニーな気分を日本中に味わわせてくれたのが、ラグビー日本代表の活躍だ。

「オリンピック、サッカーワールドカップと並ぶ世界3大スポーツ大会にもかかわらず、日本ではルールさえあまり知られていなかった。でも今大会の日本の健闘で、予想を超える国民的な盛り上がりを見せました。“ONE TEAM”の言葉とともに、アイルランド戦での“もう奇跡とは言わせない”という実況は、歴史に残る名言。“スマイルシンデレラ”で愛くるしい渋野日向子さんの活躍をはじめ、八村塁選手、大坂なおみ選手、大谷翔平選手など、若いアスリートの活躍が日本中を元気づけたのは、まさにビューティフル・ハーモニーでした」(西川氏)

「もう奇跡とは言わせない」の言葉としての広がりに石原さんは注目する。

受験生が無理だと言われていた難関校に合格したり、営業マンが大きな契約を取ったりしたとき、ギャンブルで大穴を当てたとき、いろんな場面で使うことができそうですね。それこそ流行語大賞で大賞を取ったときに授賞式で受賞者に言ってほしいぐらいです(笑)」

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