野党の中からも茅葺きを推す声が上がっている。国民民主党代表の玉木雄一郎衆院議員はこう主張する。

「茅葺きは維持すべきです。伝統は同じことを継続することに意味があります。伝統を変える場合、国民に対してしっかりとした説明が求められると思います。何か政治的な意図が入り込むようなことがあってはならないと考えます」

 もはや、茅葺き屋根に変更する余地はないのだろうか。改めて宮内庁に問い合わせてみたが、

「大嘗宮の儀に間に合わせるべく、タイトな工程の中で大嘗宮の諸建物の設営工事が進行しており、新たな工程を追加する余裕はまったくありません」(報道室)

 と、つれない返事。

 茅葺き屋根は、世界文化遺産に登録された岐阜・白川郷の合掌造りや、京都・南丹市美山町の民家集落が知られているように、日本古来の建築様式だ。今年5月には国内初の「国際茅葺き会議」が開催され、イギリス、ドイツ、オランダなど7カ国が参加して、茅葺き文化の保全について意見交換したばかり。

 前出・安藤氏は言う。

「それだけに、日本の茅葺き文化を世界にアピールするいい機会なのです。茅は屋根に葺くと断熱効果が高いうえ、通気性も備えた優れた建築資材です。傷んだ茅はすべて田畑の肥料になります。茅の原料となるヨシ原は、湖沼の水質を浄化する役割も果たしています。いま、西欧諸国では環境にやさしい循環型資源として再評価されているのです」
 日本に現在残る茅葺き屋根はおよそ10万棟。大嘗祭の社殿からも消え、このまま衰退していく文化なのだろうか。

 民族派団体「一水会」代表の木村三浩氏はこう言う。

「大嘗祭を現在のように大がかりに行うようになったのは、国威発揚にかられた明治時代になってからのことです。江戸時代以前はもっと質素な儀式でした。もともと神道の儀式は仏教のように荘厳ではありません。質素、倹約でありながら伝統である茅葺き文化を大切にしてきたのです」

 今回の茅葺き屋根をめぐる騒動は、国家と儀礼、皇室行事とは何か、を改めて考える機会にもなる。(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2019年11月8日号