ところで、最近になって、「日本の民主主義は瀬戸際に立っている」「事実上、民主主義は機能していない」とする見方が強まりつつある。
野党が弱すぎる。そして自民党議員たちが、ほとんど安倍首相のイエスマンになっている。さらに国家公務員たちが内閣人事局制度によって、審議官級以上の人事権を官邸に握られているために、自信と誇りを失って官邸の意に忖度するようになってしまった。それにマスメディア、とくにテレビが、「クローズアップ現代」(NHK)のキャスター国谷裕子氏、「報道ステーション」(テレビ朝日)のキャスター古舘伊知郎氏、「ニュース23」(TBS)のアンカー岸井成格氏などが相次いで番組から降板するという事態が起きて、無難な番組しか作らなくなってしまった。
だが、人口減少、少子高齢化と地球環境の悪化の中で、いかにすれば日本が持続可能かという超難題に、自民党政権は意思決定を先送りにして、将来世代に負担を強いるという姿勢である。だから、民主主義かどうかなどと議論する前に、何とかして日本が持続可能になる手立てを、与党も野党も自党の損得など関係なく、懸命に考えねばならないし、公務員たちも忖度など度外視して考えねばならない。もちろん、マスメディアもタブーなど度外視して、世界中の情報を集めて議論すべきである。
政界にもマスメディアにも、日本の持続が危機的状況にあるという認識が欠如しているのではないか。
※週刊朝日 2019年11月8日号