ジャーナリストの田原総一朗氏は、最近強まる「民主主義が機能していない」という見方について、その根拠をいくつか挙げる。
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10月22日に天皇陛下が即位を内外に宣言する「即位礼正殿の儀」が行われた。
陛下はおことばで、まず上皇が30年以上にわたる在位の間、国民の幸せと世界の平和を願われ、いかなる時も国民と苦楽を共にされてきた、と強調し、それを国民に寄り添って全身で受け継いでいくという強い意思を示し、平和という言葉を3回も繰り返した。このおことばには全面的に賛成で、しかも力みがなく、自然体であることがとてもよかった。
ただ、天孫降臨神話に由来する高御座(たかみくら)に陛下が立ち、首相を見下ろす形を取ったことや、三種の神器のうちの剣と璽(じ、勾玉=まがたま)が脇に置かれていることに、国民主権や政教分離の原則にそぐわないではないか、という意見が新聞でもテレビでも紹介された。実は、平成での式典のあり方に対して、大阪高裁から疑義が表明されていたのだ。
少なからぬ国民は、疑義は抱かなかったのではないかと思うが、こうした問題が新聞やテレビで取り上げられるのはよいことである。いってみれば、日本で民主主義が生きているという証拠である。
また、午後3時すぎから、「即位礼も大嘗祭(だいじょうさい)も憲法違反だ! 天皇即位式に反対しよう」というデモが行われて、約500人が参加したということだ。こういうデモが堂々と行われるのも、日本が健全であることだと私は捉えている。
だが、問題は新天皇の次の世代の皇室の男性が悠仁さま一人であることだ。悠仁さまが天皇になると、次世代の皇族の男性はゼロとなってしまう。皇室が消滅してしまう恐れがある。日本人にとって皇室はなくてはならない存在で、安倍首相もそのことはもちろんよくわかっているはずである。そして、女性宮家の審議を行うということは、当然ながら、女性天皇、女系天皇にまで議論は及ぶことになる。皇室持続の危機的状況を回避できるかが問われている。