国際的潮流と言えば、相続税の無税・軽減化もそうだ。増税しているのは日本くらい。欧米人と話していると、「どこに投資をすればもうかるか?」が話題になる。日本人の会話は、「どこに投資すれば相続税の節税になるか?」だ。

 気持ちが後ろ向きなのだ。将来の飯の種であるベンチャー企業にリスクマネーも供給されない。ベンチャー育成は政府頼みになり、これは国の勢いを決定づける。

 諸外国の格差が富裕層の富の独占によって広がったのに対し、日本では中間・低所得層の没落によって広がったというのが主な見方だ。ならば格差是正は相続税で富裕層を引きずり下ろすのではなく、中間・低所得層の引き上げによって解消されるべきだ。

 それには日本経済全体が元気を取り戻すことが不可欠だ。相続税収入は2.2兆円。消費税約1%分だ。私は消費税を1%引き上げて相続税をなくしたほうが、国民一人ひとりが豊かになると思っている。

 税金は国の勢いを決める極めて決定的な要因だ。日本の税制が「結果平等主義」になっており、日本が社会主義化していることが、世界ダントツのビリ成長の大きな要因だと思っている。そしてその結果、ハイパーインフレという事実上の大増税が差し迫っているというのが、私の主張である。

週刊朝日  2019年11月1日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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