男性ディレクターの”やらせ”について記者会見で語る篠塚浩・常務取締役(右)と長田明・広報部長
男性ディレクターの”やらせ”について記者会見で語る篠塚浩・常務取締役(右)と長田明・広報部長

 テレビ朝日は16日、夕方の報道番組「スーパーJチャンネル」内の企画で、不適切な演出があったと発表した。企画の担当ディレクターは事前にスーパーマーケットでの取材日程を知人に伝え、買い物客などとして計5人を取材したという。テレビ朝日側は記者会見を開き、

「(やらせ、しこみと)指摘されても致し方ない不適切な演出だったと考えている」

 と謝罪した。

 該当の企画は、今年3月15日の午後5時36分~53分に放送された「業務用スーパーの意外な利用法」で、業務用食品などを扱うスーパーマーケットに個人で買い物に来た客の人間模様を描いている。2017年2月から不定期放送しており、この日はシリーズ第5弾を放送した。

 この放送に登場した買い物客4人と、そのうちの1人のエピソードに登場する1人の計5人が、同企画を担当した男性ディレクター(49)の知人であった。5人に謝礼などは支払っていないという。

 男性ディレクターは事前に、5人のうち買い物客として登場した4人含む大勢の知人に、「店に来てほしい」などの直接の依頼はしていないものの、ロケのスケジュールを教えるなどしていた。これを聞いた知人の何人かが自発的に来店することを想定していたという。

 また、男性ディレクターは映画監督の経験があり、俳優養成教室の講師をしていた。買い物客4人のうち3人はここの生徒、残る1人は別の専門学校で男性ディレクターと面識のある人物だという。放送では4人全員に対して、初対面であるかのように取材した。

 登場人物は個人の必要に応じて買い物をした。放送の中で披露していた、それぞれのエピソードなどについては、おおむね実情に合った内容だったという。

 エピソードに登場した、残る1人は女性。やはり同じ俳優養成教室の生徒であり、買い物客の1人である男性の要請に応じて、男性から恋愛感情の告白を受ける相手として登場した。

 企画コーナーは、関連会社であるテレビ朝日映像への業務請負枠。男性ディレクターは別の派遣会社からテレビ朝日映像へ派遣され、18年3月から企画枠の制作に携わっていた。このシリーズを担当したのは、第5弾が初めてだった。

 今年2月に番組の企画会議でこの企画が了承され、その後1週間かけて、男性ディレクターが当該のスーパーを一人で取材。編集を経て、テレビ朝日映像およびテレビ朝日の担当者も交えて、放送2日前から計3回のプレビューを実施したが、誰も不適切な取材に気づかなかったという。

 また、取材上の問題がないことを自己申告する17項目のチェックシートも提出していた。男性ディレクターはこの企画が放送された後、4月から派遣先が変わっており、現在はテレビ朝日とは仕事をしていないという。

 テレビ朝日によると、今月4日夜に匿名の情報提供があり、7日に検証プロジェクトを立ち上げて事実関係の調査を進めてきた。男性ディレクターはテレビ朝日の聴取に対し、不適切な演出をしたことを認めた上で、「深く反省している」と話しているという。

 当該の企画はテレビ朝日、名古屋テレビ放送(メ~テレ)を含む14局ネットで放送されており、テレビ朝日は、男性ディレクターが取材・編集した別の企画12本に対しても、検証を進める方針だ。今回の件について、男性ディレクターはこう話しているという。

「当時、番組制作に自信がなくなっていて、知人に声をかけることは演出として許されないにもかかわらず、明確な指示さえしなければやっていいのではないかと、自分に都合よく解釈していた」

 16日夜にあった会見には、テレビ朝日の篠塚浩・常務取締役と長田明・広報局長が出席し、

「関係者のみなさま、視聴者のみなさま、ロケ現場を提供してくださったお店の関係者の方々に、深くおわび申し上げます。誠に申し訳ございませんでした」

 と謝罪した。(本誌・緒方麦)

※週刊朝日オンライン限定記事