室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
イラスト/小田原ドラゴン
イラスト/小田原ドラゴン

 作家・室井佑月氏は、かんぽ生命保険の不正販売問題の顛末に苦言を呈する。

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 かんぽ生命保険の不正販売問題。「2014~18年度に顧客に不利益を与えた疑いのある18万3千件を対象にした調査で4割弱しか完了していないが、事態の深刻さが浮き彫りになった」(10月2日付の日本経済新聞電子版)という。

 二重の意味でびっくりだ。4割弱しか調査できていない? そりゃ、不利益を受けた可能性がある人が、18万3千人もいるんじゃな。

 オレオレ詐欺より悪質じゃないのか? 人々の郵便局への思いを利用したのだから。地方へいけばいくほど、昔から荷物や手紙を届けてくれる郵便局への愛情は強い。騙(だま)された人は高齢者が多いが、「郵便局の人」と思っていたんではないか? まあ、間違いではないんだけど。

 日本郵便は非上場で、日本郵政の100%の子会社。でもって、その日本郵政の社長は、かんぽ生命、日本郵便、ゆうちょ銀行の取締役も務めている。

 郵政民営化法で、政府の持ち株比率を3分の1超に引き下げ、その残りの株をすべて売却することになっている。

 地方にとって郵便局は重要で、でもその経営は厳しいといわれる。だからって、慕ってくれているお年寄りを騙しちゃいかんだろ。かんぽで稼いで株を少しでも高く売りたかったんか? 報道によれば、郵政局員のノルマもかなりきつかったみたいだし。

 でもって、このことを報道したNHKの『クローズアップ現代+』に恫喝(どうかつ)をかけていたっていう。 

 NHKの上田良一会長は10月3日の会見で、「自主自律や番組編集の自由が損なわれた事実はない」と答えたけど、NHKは抗議後、放送予定だった続編を未定にした。この日の朝日新聞によれば、「NHKが続編の放送を昨年8月に予定しながら、日本郵政側に見送ると説明していたことが分かった」とある。日本郵政側が明らかにしたという。 

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室井佑月

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室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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