森下は即戦力として最も魅力的で、先発投手の駒不足に悩む球団はのどから手が出るほど欲しいだろう。

 大分商高2年秋から本格的に投手に転向。大学3年まではケガなどで苦しんだが、主将になった4年に覚醒した。春の東京六大学リーグで4勝1敗、防御率2・03。大学選手権でも2試合に登板して1失点に抑え、チームを日本一に導いた。

 大学の先輩・柳裕也中日)に似た、腕が縦振りのフォームから大きく割れるカーブが武器。佐々木、奥川と同様に、複数球団から1位指名されてもおかしくない。

 佐々木、奥川と共に「高校BIG4」と形容された西純矢(岡山・創志学園高)も1位候補だ。2年夏の全国選手権大会1回戦・創成館(長崎)戦で、16奪三振完封と衝撃の全国デビュー。3年夏は甲子園出場を逃したが、U18(18歳以下)ワールドカップでも高校日本代表の主力として投打で活躍した。鋭い縦変化のスライダーとフォークが武器。打撃センスもあり、「二刀流」の期待も膨らむ。

「BIG4」最後の一人は、最速153キロ左腕の及川雅貴(横浜高)。今春の選抜大会1回戦・明豊(大分)戦、夏の神奈川大会準々決勝・相模原戦で打ち込まれたが、潜在能力は高い。1位で指名されても驚きはない。

 野手に目を移すと、海野が抜群の強肩で球界屈指の捕手になる可能性を秘めている。岡山・関西高卒で、昨年のハーレムベースボールウィーク、今年の日米大学野球ともに、大学日本代表の正捕手として優勝に貢献した。打撃も3年春に打率3割3分3厘で首都大学リーグの首位打者に輝くなど、広角に打てる。1位で消えるのは間違いない。

「打てる捕手」として評価が高いのは佐藤都志也(東洋大)だ。福島・聖光学院高卒で、一塁で起用された2年春に打率4割8分3厘で東都大学リーグの首位打者を獲得。3年春から正捕手に定着し、1学年上の上茶谷大河(DeNA)、甲斐野央(ソフトバンク)、梅津晃大(中日)を巧みなリードと強肩で引っ張った。長打力を磨けばトリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁以上)も狙える。プロでは一塁、外野で指名する球団があるかもしれない。

 石川昂弥(愛知・東邦高)は日本を代表するスラッガーになれると期待されている。高校通算55本塁打。今春の選抜大会では3本のアーチを放ち、投手としてもエースとして優勝に貢献した。プロでは打者一本で勝負する。

 社会人では、即戦力左腕として期待されているのが河野竜生(JFE西日本)だ。徳島・鳴門高卒。昨年の日本選手権では3試合に先発し、防御率0・33で敢闘賞を受賞した。小さな投球フォームから空振りを奪える左腕の投球スタイルは和田毅(ソフトバンク)と重なる。まだ21歳。佐々木、奥川の競合を避けて単独1位指名を狙う球団があるかもしれない。

 社会人右腕で評価が高いのは、最速153キロの太田龍(JR東日本)だ。鹿児島・れいめい高では甲子園に出られなかったが、山本由伸(オリックス)、梅野雄吾(ヤクルト)、浜地真澄(阪神)と共に「九州四天王」と形容された。昨年の都市対抗では3試合に登板し、11回3分の1を無失点に抑えて若獅子賞を受賞した。20歳。馬力があり、プロでは救援向きか。

 他にも1位候補として、いずれも投手の宮城大弥(沖縄・興南高)、吉田大喜(日体大)、立野和明(東海理化)、宮川哲(東芝)らは指名される可能性が十分にある。

 前出のスポーツ紙のアマチュア担当は、今年のドラフト全般についてこう語る。

「捕手は海野、佐藤、慶大の郡司裕也(仙台育英高卒)、高校生も智弁和歌山の東妻純平ら近年にない豊作だと思います。佐々木、奥川も近年のドラフトにはいない可能性を秘めた投手です。ただ、即戦力投手、野手の観点で見ると、不作ですね。特に投手は大学、社会人と質、量ともにレベルが高くない。ファームの選手を育てたほうが良いと考え、指名が高校生に偏重する球団もあると思います」

 今年はどんなドラマが起きるだろうか。(牧忠則)
(週刊朝日2019年10月25日号)