女子はどうか。フィギュアを長く取材するライターの田村明子さんは、今季シニアデビューした15歳のアレクサンドラ・トルソワ(ロシア)に注目する。

「(9月の)ネペラメモリアル(スロバキア)のフリーで4回転を3度着氷し、総合238・69点と(昨季のルール改正後の)世界最高得点(ザギトワ)を更新しました。ザギトワと(昨季GPファイナル覇者の)紀平梨花の争いに確実に食い込んでくると思います」

 実際、5日に男女2人ずつによるフリーの合計点で争われた、日本、北米、欧州の3地域対抗団体戦・ジャパンオープン(さいたま市)で、トルソワは4回転を4本決めて160・53という高得点をたたき出し、ノーミスで滑ったザギトワと、3回転半を2本成功させた紀平を上回った。

 GPシリーズ各大会の見どころについては、

「初戦で、3回転半を跳ぶエリザベータ・トゥクタミシェワ、4回転ルッツを跳ぶアンナ・シェルバコワ(ともにロシア)と(全日本女王の)坂本花織が対戦します。2戦目(スケートカナダ)では、紀平がいよいよトルソワと対決です。4戦目(中国杯)は(平昌五輪4位の)宮原知子にとって、GPファイナル進出を狙うなら絶対に勝っておきたい試合。やはりトゥクタミシェワ、シェルバコワとの戦いになるでしょう」

 昨季までジュニアだったトルソワやシェルバコワ、昨季ジュニアGPファイナル覇者のアリョーナ・コストルナヤ(ロシア)が一気に台頭しそうな今季。GPシリーズ上位6人で競うGPファイナル(イタリア)進出に向け、いっそう厳しい戦いになりそうだ。

「GPファイナルだけでなく、ザギトワや(平昌五輪銀の)エフゲニア・メドベージェワ(ロシア)が欧州選手権や世界選手権に出られないという事態も十分にあり得るわけです。今季からガラリと表彰台の顔ぶれが変わる可能性もあります」

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 メインコーチ不在で臨む今季の戦いぶりに注目が集まる宇野。今季初戦となった5日のジャパンオープンでは、3月の世界選手権(さいたま市)で4本跳んだ4回転ジャンプを2本に減らしたものの、ともに出来栄え点(GOE)はマイナスの評価。得点は男子2位の169・09点で、同1位のチェンとは20・74点差だった。
 
 試合後の会見で、

「プログラムの内容はもちろん詰めていきたいところはあるが、演技を終えた後に『楽しかったな』と思える演技を今シーズンのどこかでやれたら、と。これが今シーズンの最大の目標」

 と述べた。

「ジャンプ以外のところを真剣に詰めていきたい。ジャンプへの挑戦はやめないとは思うが、プログラムというものが崩れない程度に挑戦したい」

 6日に東京都内であったGPシリーズ開幕前の記者会見でも、「楽しみたい」を繰り返した。

「このまま、つらい、苦しいだけで(自分のスケート人生を)終わらせていいものか。選手生活はずっと続くわけではない。(これからは)曲に合わせて踊る『心地よさ』を大会の場で感じていければ。練習がつらい分、試合を楽しみたい」(本誌・大崎百紀)

週刊朝日2019年10月25日号