■入社後にのびる! 出世する! 企業が採用したいリベラル8

 職場でよく聞かれるボヤキといえば、「偏差値は高いけど仕事では使えない……」。優秀な人材の確保は企業の永遠の課題だ。変化の激しい時代に、企業から熱い視線を集めているのが、国際・教養系の大学や学部で学ぶ学生だ。

 国際はわかるが、教養系とは何か。経済学や法学など一つの分野で専門性を高めるのではなく、より幅広い学問を学び、さまざまな視点から考えることができる人材を育てる学問の系統を指し、「リベラル・アーツ」とも呼ばれる。先の井上さんはこう述べる。

「自分の興味関心のある学問を幅広く学べることで、自ら学んでいく姿勢を身につけることができる。社会人になってからも、能力が伸び続けると企業からも評判が高くなっている。こうした人気のある国際・教養系のグループをリベラル8と呼んでいます」

 リベラル8とは、国際教養大、東京外国語大、国際基督教大の3単科大学に、早稲田大国際教養、慶應義塾大総合政策・環境情報、法政大グローバル教養、明治大国際日本の5学部。明治大国際日本学部の鈴木賢志学部長はこう話す。

「高校までの限られた情報の中で将来を決めるのは難しい。国際日本学部では入学後に授業を通じて自分のやりたいことを見いだせるように教育。必修の授業が少なく、学生は興味がある授業を受講できるので意欲が高まる」

 幅広い分野を学ぶことができる上、アメリカのウォルト・ディズニー・ワールドで半年間インターンシップができるプログラムなど、実践的な教育も重視。学生の満足度も高く、今年入学した男子学生(19)は話す。

「日本だけではなく、海外の文化や歴史に関心があったのに加え、ものをどうやって売るかなど幅広いことを学びたいと思って、志望した。ディズニー・ワールドへのインターンシップも参加できるように努力している。今はここで学べていることが楽しいです」

 企業の評価は就職実績に出ている。外務省やANA、日産自動車など人気官庁や企業に就職している。学びの成果は卒業後にも表れている。

「入社後に周りから頼られる人材が多い。商社に入社した卒業生が異例の2年目で海外赴任を決めるなど、出世するような人材も出ています」(鈴木学部長)

(本誌・吉崎洋夫、緒方麦)

週刊朝日  2019年10月18日号より抜粋

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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