偏差値の高い大学なら就職も安泰というのは今は昔。在学中から、社会で役立つ確かな資格やスキルを身につける時代になった。文系志望の場合、大学の制度を利用して子どもに語学を身につけさせたいと願う親が増えているという。

 文部科学省によると、17年度の日本人の留学生の数は約10万人。およそ大学生の25人に1人が留学をする計算だ。短期留学が多いが、半年や1年の長期留学も珍しくない。

 こうした中、日本の大学に入っても、海外の大学の学位が取れる制度に親の熱い注目が集まっている。中学受験情報誌「進学レーダー」編集長の井上修さんはこう語る。

「海外の大学と連携し、学位が取れる仕組みが急速に広まりつつあります。保護者や受験生から人気を集めているのがMSRです」

 MSRとは、武蔵大、昭和女子大、立命館大の3大学の頭文字。武蔵大経済学部では英国の名門大・ロンドン大と提携し、日本にいながらロンドン大の学位が取れる制度を用意。立命館大国際関係学部では、米国の名門アメリカン大との共同学位を取れる。

 井上さんが特に注目するのは昭和女子大だ。昭和女子大の国際学部では国内で3年間学び、中国の名門校・上海交通大、または韓国のソウル女子大に2年間留学すると、二つの学位を取得することができる。さらに、昭和女子大附属の昭和中学校・高等学校に通うと、高3から大学の授業を1年間前倒しで受講でき、留学してもきっちり4年間で大学を卒業できる。留学で心配なのは卒業時期が遅れること。この制度があれば安心と、中学受験を検討する親も増えているという。

 今年からは米国の州立テンプル大の日本キャンパスが昭和女子大のキャンパス内に移転。日本にいながらテンプル大の学位も取得可能になった。国際学部の柏木厚子教授はこう述べる。

「留学するだけでは評価されない時代です。海外の学位を取得する“もう一つ上の留学”を目指せる点が人気を集めている。テンプル大学との提携も始まり、この制度を利用したい受験生も増えると見ています」

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