「秘書や関係者の段取りがちょっとでも悪いと、周りに人がいても叱り飛ばすことがある。閣僚になるべき人はそんなことはしないはずです。人望がないことは『次期総理の座』のレースにも影響してくる」

 怖い上司に部下が忖度するのはどこの企業でもありそうだが、政治や行政の世界だとやっかいなことになる。森友・加計学園問題では、財務省や文部科学省の官僚らの忖度が批判を浴びた。茂木氏のケースはレベルが違うかもしれないが、「安倍一強政治」のもとで官僚が政治家に過剰に配慮する構図は同じだ。経済官庁のある幹部はこう訴える。

「政治家に目をつけられないよう、みんな恐れている。出世に響かないよう厳しい意見は言わずに、うまく機嫌さえ取っておけばいいという考え方の人もいます。官僚は国家全体に尽くすべきですが、いまはどうしても忖度するようになってしまっています」

 政治と金の問題に詳しい神戸学院大の上脇博之教授(憲法学)は、内閣人事局が14年にできて、官僚の人事を政治が握るようになったことが背景にあるという。

「昔は官僚の理屈の中で出世が決まっていたが、官邸を中心に人事権を握るようになりました。これまでも忖度はあったのでしょうが、それが森友・加計問題でもわかったように、あり得ないところまで来ている。今回のケースはそれを象徴する感じを受けます。公私混同や権力の乱用がないかどうかチェックが必要です」

 茂木氏の事務所や外務省には見解を求めたが、期限までに回答はなかった。

 冒頭で紹介したように臨時国会が始まっている。外交問題に加え、消費増税の是非など経済政策も議論される。かんぽ生命保険の不正販売やNHKへの圧力疑惑、関西電力の原発と裏金の問題など、政府側が追及されるテーマは豊富だ。安倍一強政治におごりはないのか、官僚はおもねっていないのか、国民の厳しい目が注がれている。(本誌・忖度問題取材班)

週刊朝日  2019年10月18日号