2024年ごろからはこうした手続きが簡略化される見込みだが、それより前に“もしも”のことがあれば、かなりの手間と時間が必要だ。明石さんは戸籍があった市区町村に一斉に請求できるよう、一覧にしておくことを勧める。

「できれば実際に、自分で出生から現在までの戸籍謄本を取得しておくほうが確実です。相続手続き時に再度取り直しが必要ですが、請求先自治体と相続人がすぐ判明するだけでも、子どもには大きな助けになります。ただし秘密にしたい戸籍情報がある場合は一覧表のみにします」(同)

 また、簡単な家系図や親類一覧とその連絡先などを残しておくと便利だ。

 相続人が複数いる場合、自宅などそのままでは分割できない不動産の扱いはやっかいだ。家族が集まる機会を利用して希望を伝えたり、子の意思を確認しておきたいと高橋さんは勧める。

「子のために自宅を残したいと考える人が多いが、離れて暮らす子には迷惑なことも。もしそうなら、自宅を老後資金に換えることを検討してもいいのでは」

 仲の良いきょうだいでも、利害がからめば揉め事も生じる。こうした事態を避けたいなら、遺言書を残すのも手だと高橋さんは言う。

「面倒なイメージもありますが、19年1月から自分で書ける『自筆証書遺言』の要件が緩和され利用しやすくなりました」

 財産の目録を自筆しなくてもよくなったので、遺言書だけを自筆して、あとは登記事項証明書や通帳のコピー、あるいはパソコンで作った一覧であっても、署名捺印さえすれば認められることになった。また、20年7月からは、自筆証書遺言を法務局に保管してもらえる制度ができる。遺言書の存在を子どもに伝えておけば、紛失や改ざんされるリスクがないうえ、生前に内容を知られることなく保管できるようになる。

週刊朝日 2019年10月11日号より抜粋