自分が後を継いでも、次に守ってくれる子や孫がいなければ、いずれ無縁墓になることを気に病む子もいるだろう。こうした負担を負わせたくないと考えるなら、今ある墓を閉じる「墓じまい」が有力な選択肢となる。閉じた後は、継承の必要がない永代供養墓や合祀墓を利用したり、海洋散骨や樹木葬などで自然にかえる方法などがある。管理できる見込みがあれば、子の住まいの近くに新しい墓を購入してもいい(改葬)。

 墓じまいは親の死後に子が実行するケースが多いが、親自らが検討し、結論を出すほうが子どもの負担は圧倒的に軽いという。

「墓じまいの決断は罪悪感を伴うこともあり、子には精神的につらい。菩提寺から離れる離檀の交渉も、日ごろやり取りのない子にやらせるより自分でやるほうがスムーズ」(高橋さん)

 散骨や合祀する場合でも、遺骨の一部をコンパクトな納骨家具に入れて自宅に置いておく人もいる。お墓に入るより、故人を身近に感じてもらえるかもしれない。

 墓じまいする場合は、自分のきょうだいなど親類にも伝えておきたいと高橋さんはアドバイスする。

「自分の意思であることを明確にしておかないと、子どもが親類から責められてしまうことがあります」

 今の菩提寺に継続して世話になりたいなら、墓の管理料や檀家の務めについて子どもに伝え、承諾を得ておきたい。また、住職や関係者と子の顔つなぎをしておくといいだろう。

■【相続】簡単な家系図や親類一覧、連絡先なども残しておく

 資産の多寡に関係なく、相続人を確定して全員が印鑑をつかなければ相続はできない。このとき、遺族が困るのが、故人の戸籍を取ることだ。

「相続人を確定するため、故人の出生から死亡までの戸籍謄本などをすべて集める必要があります。死亡時の本籍地でその役所にあるすべての戸籍謄本などを取り、記載されているひとつ前の本籍地で同様に取得して、出生までさかのぼることを繰り返さなければなりません」(明石さん)

次のページ