現金や有価証券以外の資産も、改めてリストアップしよう。特に不動産は登記簿謄本で名義を確認しておきたい。親名義と思い込んでいた自宅が、実は亡き祖父母の名義のままだったということはよくある。こうしたケースでは、残された子はまず祖父母から親への相続に着手しなければならない。祖父母の子ら相続人が故人の場合は、その子や孫などが代襲相続人になっており、付き合いの途絶えている親類であっても印鑑をもらわないと自分の名義にできないことになる。

「これができないと遺族は不動産の売却など一切の処分ができない。残された子にやらせるより、自分でおじおばや甥姪などに連絡し、印鑑をもらうほうがずっと楽です」(高橋さん)

■【介護・終末期】好物はイチゴ、下着は綿…「自分のトリセツ」を書く

 介護には先立つ資金も必要だ。70代後半になったら資産額に加えて、年金などの収入がいくらあるかもリストにして伝えておきたい。企業年金や個人年金、不動産収入などがある場合も、忘れず書き残しておこう。

 介護施設に入居するような場合は収入だけでは足りず、資産を取り崩して一時金を払う必要もある。こうしたとき、子が親の資産から支払えるよう準備しておくことも大切だ。

「定期預金だと家族が本人の代わりにATMでおろすことができないので、ある程度普通預金に移しておくといいでしょう。あるいは、子名義の口座をつくっていくらか移しておく名義預金も検討して」(高橋さん)

 この際はきょうだい間でトラブルにならないよう、全員に周知しておこう。

 エンディングノートはとかく家族のためと思われがちだが、自分のために書いておきたい項目もある。それが「自分のトリセツ」だ。

「好きなもの、嫌いなもの、こだわりなどを書き残しておくと、意思を伝えるのが難しい状態になったときでも快適に過ごせる可能性があります」(明石さん)

 たとえば、好物はイチゴ、柔軟剤の香りが苦手、下着は綿100%といった好き嫌いやこだわりが家族やヘルパーに伝われば、すべてが実現しなくても、気を配ってもらえるものだ。「面会に行くときはイチゴを持参しよう」「下着を買うときや洗濯のときは注意しよう」といった判断ができるので、自分自身が快適に過ごすことにつながる。

 ただし、具体的にどんな介護を受けたいかの希望については「安易に限定しないように」と注意を促す。

「『長女に介護してほしい』といった明確な指定は特定の家族に負担が集中します。『自宅を離れたくない』も同様で、状態によっては自宅介護がベストとは限らない。幅を持たせた書き方を」(同)

 介護や終末期では、家族の意見が分かれることも多い。高橋さんは、こうしたときに最終判断する人を指名しておくことを勧める。

「たとえば延命治療をするかしないかという問題に、正解はありません。本人が意思を書き残していても、全員が受け入れるのは難しいこともある。こういうときに『最後は長男の判断に従ってほしい』と指名しておくと、結論を出しやすくなります」

※週刊朝日 2019年10月11日号より抜粋