幹部の刷新もなく、八木会長、岩根社長体制が継続。告発文書には、関西電力が求めに応じないなら、大株主の大阪市や神戸市、元大阪市長の橋下徹氏、反原発の市民団体、朝日新聞などマスコミ各社などに情報提供すると書かれていた。

「うちが知らんふりを決め込むと、マスコミなどに告発文書が撒かれはじめた。一気に情報が広まってもうちはなんの対応もしない。さらに傷口が大きくなり、マスコミ報道が先行。緊急記者会見で詫びる大スキャンダルに発展してしまった」(前述の関西電力社員)

 本来なら、関西電力に原発マネーを提供していたことで、糾弾されるべき森山氏について岩根社長は記者会見でこう庇っていた。

「森山氏には世話になっている」

 森山氏を知る、高浜町の原発関連業者の一人はいう。

「森山氏と吉田開発の特別な関係は地元では知られるところ。そして、関西電力との癒着もかねてからささやかれていた。岩根社長が会見で、森山氏に世話になったと庇ったのは、高浜町の“影の町長”とも呼ばれた森山氏の影響力がそれほどすごかったということでしょう」

 告発文書の主は、関西電力の役員に提供されていたカネの原資が

<ほかならぬ、お客さまから頂いている電気料金で賄っていること>

 と厳しく非難している。まさにその通りだ。

「修正申告した」「今後、調査委員会で調べる」という関西電力。

 だが、会長、社長ら20人の幹部が金品を受け取るという前代未聞のスキャンダルの信頼回復ははるか遠い。(今西憲之)

※週刊朝日オンライン限定記事

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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