この業者によると、地元の原発工事でも森山氏は存在感を発揮した。

「森山さんの紹介がなきゃ、地元で工事も入れてもらえんよ。町長や町議の選挙だって、森山さんのところに挨拶にいかなきゃ当選できない。イベントでは一番の貴賓席に森山さんが座っていて、町長がわざわざ、挨拶していたさ。影の町長と呼ぶ人もいる」(前出の業者)

 今回、発覚した裏金問題については、前出の業者はこう語った。

「3億2000万円を関電さんにもらうのじゃなくて、渡すって、やはり森山さんのすごさだなと思った。カネの一部は幹部に振り込まれていたってことは、銀行口座を聞き出したということでしょう。森山さんでなきゃできないよ。関電さんが機嫌を損ねたくないから返せなかったということ。それくらいのフィクサーだったね。今回の事件はその裏付けじゃないかなと思った」

 数年前、台風被害で高浜町の漁港が壊滅的な被害を受け、関電から再建のために資金提供があったという情報もキャッチした。その工事について調べると、森山氏らに”裏金”が渡っていたのではないか、と高浜町議会で問題になったことも確認できた。

 そこで森山氏を直撃すべく、高浜町の自宅に向かった。約7年前のことだ。

「長い壁があって、玄関に大きな立派な松の木がみえる大きなお宅」と教えてもらった森山氏の邸宅に辿り着き、インターホンを押したが、誰も出てこない。

 近くで時間をつぶして再度、訪ねてみると、玄関先におじいさんが立っていた。

「森山さんでしょうか」と尋ねると、

「そうですが」と答えたおじいさんこそが森山氏本人だった。

 取材で来たことを告げ、名刺をさし出すとこう答えた。

「福島で事故があってから、1人か2人、話を聞きたいと記者がきたよ。あんたもか? 原発で喋るような話はないから…」

 名刺も「いいから」と受け取ろうとしなかった。関西電力との関係について質問をぶつけてみた。

「高浜町は関電さんと仲良くさせてもらって、いい町になった。それだけだよ」

「やっかみ、嫉妬もあってか、周囲でいろんなことを言う人がいるが、記者さんが探るような変な話はないから…」

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フィクサーのオーラとは?