サウジが主導する有志連合軍は、フーシの支配地域などを空爆し、これまで1万人以上の民間人が犠牲になっている。フーシもたびたびサウジ国内へ反撃を続けており、8月には天然ガス施設をドローン攻撃したばかりだ。

 問題がここまでこじれているのは昨年5月、米国がイラン核合意から一方的に離脱し、制裁を再開してイランを刺激したことも原因の一つだろう。結果的に米国はサウジやイスラエル、UAE(アラブ首長国連合)など同盟国と、イランなど他の中東諸国との対立をあおっている。

 外交評論家の孫崎享氏はこう語る。

「トランプ大統領は当初『臨戦態勢を取る』とツイートしていましたが、その後は『イランとの戦争は避けたい』と発言するなど、慎重な姿勢も見せています。対外強硬派のボルトン補佐官を更迭しましたが、娘婿のクシュナー上級顧問らは何か口実があれば、イランを攻撃したいと考えています。トランプ政権には対イラン強硬派が残っています。中東情勢がおかしくなって石油の安定供給が脅かされれば、先進国の中で最も影響を受けるのは日本です」

 6月には、イランの革命防衛隊が米軍の無人偵察機グローバルホークを撃墜。その1カ月後にはホルムズ海峡周辺で、米海軍の強襲揚陸艦がイランの無人機を打ち落とすなど両国の緊張は高まるばかりだ。中東情勢は先行き不透明で、原油輸入の4割をサウジに依存する日本も対応に苦慮することになる。

 前出・日本エネルギー経済研究所の小山氏によれば、「原油価格が15ドル上昇すると、日本経済の成長率は0.2%下押しされる」という。原油価格が高騰すれば、消費増税とダブルパンチになる。

 小山氏が続ける。

「ガソリン代が上がれば、消費者にとってはさらなる増税みたいなものですから、暮らしにも悪影響が出てきます。日本のような石油輸入国にとって、国際石油市場の安定は非常に重要なのです」

 紛争が激化すれば、日本経済への悪影響は必至だ。日本は「オイルショック」と常に背中合わせなのである。(本誌・亀井洋志)

※週刊朝日オンライン限定記事