「イランとの戦争は避けたい」と発言するトランプ大統領だが……(C)朝日新聞社
「イランとの戦争は避けたい」と発言するトランプ大統領だが……(C)朝日新聞社

“石油危機”は本当に回避されたのか――。9月14日にサウジアラビアの石油施設が攻撃された問題で、同国のアブドルアジズ・エネルギー相は17日の記者会見で、9月末までには生産量は通常に戻るとの見通しを示した。

 17日のニューヨーク市場では供給不安が和らぎ、急騰していた原油価格も一転して大幅に下落。指標の「米国産WTI原油」の先物価格が前日比3・56ドル安い1バレル=59・34ドルで取引を終えた。

 今回、攻撃されたのはサウジ東部のアブカイクにある国営石油会社「サウジアラムコ」の石油施設など2カ所だ。ドローン攻撃を受けて出火し、原油生産量のおよそ半分に当たる日量約570万バレルの生産が中断に追い込まれた。

 犯行声明を出したのは、内戦中の隣国イエメンの反政府武装組織フーシで、10機のドローン(無人機)で攻撃したと“戦果”を誇示した。

 日本エネルギー経済研究所の首席研究員、小山堅・常務理事がこう指摘する。

「サウジのエネルギー相の発言通り、石油施設が早期に復旧すれば、世界経済や日本への影響はほとんどないと言っていいでしょう。しかし、アブカイクは世界最大規模の石油関連施設であり、サウジの心臓部といえる重要拠点です。厳重な警備下に置かれていましたが、それをかいくぐって打撃を与え、大量の石油供給が止まったことは深刻な事態です。停止した570万バレルは世界の日量生産の5%に相当し、かつての石油ショックや湾岸戦争で市場から失われた量と比較しても少なからぬ量です。フーシの報道官は引き続き石油施設を標的にすることを示唆しており、石油供給停止リスクが今回で終わるという保証はありません」

 サウジの同盟国である米国は、イランが巡航ミサイルを発射するなど直接攻撃に関与したと見ているが、イラン側は全面的に否定している。フーシはイラン指導部と同じイスラム教シーア派で、イランから武器提供を受けているとされる。サウジは2015年からイエメン内線に軍事介入し、ハディ暫定政権を支援。一方、イランはフーシの後ろ盾となって対立し、内戦はサウジとイランの“代理戦争”の様相を呈している。

次のページ
1万人以上の民間人が犠牲に