利用者が増えている「 PayPay(ペイペイ)」 (c)朝日新聞社
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利用者が増えている「 PayPay(ペイペイ)」 (c)朝日新聞社
ポイント還元率は店舗によって異なる(上)/ポイント還元を使いこなすコツ  (週刊朝日2019年9月27日号より)
ポイント還元率は店舗によって異なる(上)/ポイント還元を使いこなすコツ  (週刊朝日2019年9月27日号より)
キャッシュレス決済の主な種類と特徴  (週刊朝日2019年9月27日号より)
キャッシュレス決済の主な種類と特徴  (週刊朝日2019年9月27日号より)

 今回の消費増税では、政府は国民の批判をかわすために、いろいろな「負担軽減策」を実施する。私たちが払う税金をもとにした“ばらまき”なので、手放しでは喜べないが、しっかり活用しよう。

【図表】ポイント還元率は店舗によってどう異なる?使いこなすコツはこちら

 目玉はキャッシュレス決済によるポイント還元制度だ。クレジットカードやデビットカード、電子マネーやスマホのQRコード決済など、現金を使わないときに適用される。税率が8%の食品を含め、基本的に何を買ってもよい。

 期限は来年6月までで、還元率は店舗によって異なる。左上の表にあるように、中小企業の小売店や飲食店なら決済額の5%。アマゾン楽天などの通販サイトに出店する中小企業も5%だ。コンビニやガソリンスタンドなど大企業のフランチャイズ店なら2%の相当分が返ってくる。この還元分を政府が税金で補助する。

 対象となる店舗は経済産業省に申請し、登録されたところ。もともと中小企業の支援が目的なので、大手スーパーなどでは受けられない。中小企業の店舗でも登録を受けていないと対象外だ。

 経産省によると9月6日までに申請したのは約59万店。想定では参加可能なのは約200万店で、その3割程度にとどまる。このままでは、登録が10月1日に間に合わない店が続出しそうだ。

 ポイントサービスの情報サイトを運営する「ポイ探」代表の菊地崇仁さんは、次のポイントを確認するよう呼びかけている。決済方法が制度の対象になっているか、店が登録しているか、ポイントがどう返ってくるかの3点だ。

「クレジットカードやデビットカードは、海外で発行されたものを除けば、ほぼすべてが対象です。電子マネーはSuica(スイカ)の無記名式のカードなど、一部で対象とならないものもあります。発行会社のサイトを確認したり、直接問い合わせたりしましょう」

■現金払いは卒業 たまるポイント

 キャッシュレス決済といっても種類や特徴はいろいろ。スマホを使いこなせない人は、クレジットカードやデビットカードから始めよう。現金払いから卒業しポイントをためれば、年間数万円はお得になることもある。

 決済サービスコンサルティングの宮居雅宣代表はこう注意を促す。

「複数の決済方法を導入している店では、ある決済方法は対象となるのに、別の方法だとならないケースも想定されます。買い物の際にはよく確認してください」

 ポイントを還元する方法も、決済方法や会社ごとに異なる。クレジットカードでは、その月の還元分がまとめて割引されたり、買い物で使えるポイントとして返ってきたりする。電子マネーでも、買い物時に還元分を割り引いたり、電子マネーの残高にポイント分を加算したりする。

 最近は「PayPay(ペイペイ)」や「LINE Pay(ラインペイ)」といったQRコードを使った新しい決済サービスも広がってきた。各社とも利用者を増やそうと、「最大20%還元」「総額300億円還元」といった派手なキャンペーンを繰り広げている。どれを選べばいいのか迷う人も多いだろうが、前出の菊地さんは、使いこなす自信がなければ無理に利用しないほうがいいと言う。

「赤字覚悟でキャンペーンを展開する会社もありますが、優遇サービスがいつまで続くのか疑問です。使い勝手がよいサービスだけを選び、買い物をするときも本当に必要なものかどうかよく考えましょう」

 ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんは、チャージできる金額に上限がある電子マネーや、銀行口座の残高分しか使えないデビットカードで十分だという。

 軽減税率とキャッシュレス決済のポイント還元、さらに独自に上乗せされる各社ごとのポイントをうまく組み合わせると非常にお得だ。消費税還元をうたったセールも予想されるため、増税前に慌てて駆け込み購入する必要性は少ない。経済ジャーナリストの荻原博子さんはこう言う。

「消費税が上がって景気が悪くなるとモノが売れなくなるので、セールも頻繁に行われるでしょう。食品など軽減税率の対象品目も、セールの対象になる可能性があるので上手に利用しましょう」

 下にまとめた「ポイント還元を使いこなすコツ」の表も見て、もらいそこねがないようにしたい。

【ポイント還元を使いこなすコツ】
■還元制度の対象店舗かどうかを確認
制度に未登録の店ではポイント還元を受けられない。制度に対応した店かどうか、ネットや店頭のポスターなどでチェック

・還元の方法はいろいろある
還元の仕方は利用する決済方法によって異なる。その場で割引されるのか、後日、精算時に割引されるのかなど、どう還元されるのか確かめておく

・独自の還元サービスもうまく活用
制度の対象外である大手スーパーや百貨店でも、増税に合わせて還元キャンペーンや割引サービスを実施するところがある。中小店舗でも独自サービス分を上乗せして、還元する場合もある

・本当にいるものだけ買おう
お得感に惑わされて不要な物を買ってはもったいない。本当に必要かどうかよく考えよう。使い慣れないキャッシュレス決済を、無理してやらなくてもよい

■25%得な商品券 住宅ポイントも

 ほかにも、政府のばらまき策はある。プレミアム付商品券や次世代住宅ポイント制度などだ。

 プレミアム付商品券は、住民税の非課税世帯と3歳半以下の子どもがいる世帯向けに、市区町村が発行する。1人当たり最高2万円で2万5千円分の商品券が買える。非課税者や子どもの人数分だけ買うことができ、対象者は約2450万人と国民の約5人に1人。使えるのは10月1日から最長で来年3月末までで、金券やたばこなど買えないものもある。

 次世代住宅ポイント制度は、新築やリフォームが対象。工事の内容に応じて家電や子育て商品などと交換できるポイントがもらえる。新築の場合は最大35万円分、リフォームは最大30万円分。リフォームには若者・子育て世帯向けの優遇もある。来年3月までに契約・着工する工事が対象なので見逃さないようにしたい。

 年金の支給額が少ない人が月5千円を受け取れる「年金生活者支援給付金」の制度も10月に始まる。年金を含めた年収が約88万円以下などの65歳以上の人や、障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取っていて一定の収入以下の人が対象。約970万人が対象で、受け取るには手続きをしなければいけない。日本年金機構が対象者に書類を送るので、忘れずに返送する。不安なら年金事務所で相談する。

 お得な制度があっても、申請しなければ意味がない。前出の菊地さんは情報収集の大切さを訴える。

「普段からの情報収集が重要なので、ニュースなどをこまめにチェックし、アンテナを張っておくようにしましょう」

 最後に消費税を避ける究極の方法を教えよう。それは個人売買。身近な商品などを個人間で売買するときは、消費税は基本的にかからない。フリーマーケットやネットオークションでは、消費税を気にせずに買い物ができる。ヤフオク!やメルカリといったサイトをのぞくと、さまざまなものが出品されている。新品同様のものもあるので、欲しいものがあれば一度検索してみよう。

 10月1日の消費増税まであとわずか。今回の記事を参考に準備を急ぎたい。(本誌・池田正史、浅井秀樹)

週刊朝日  2019年9月27日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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