そもそも、今回の西川氏の疑惑は、ゴーン前会長とともに逮捕されたグレッグ・ケリー前代表取締役が「文藝春秋」で指摘。西川氏は2013年春ごろまでにケリー氏に、報酬を上げてほしいと要望したほか、日産に自身の新居の購入を打診したという。その際、「自分はSARを何株もっているか」と尋ねたそうだ。株価が上昇するなか、すでに決めた行使日を後にずらして上積みを得た後は、西川氏から不動産購入の提案が取り下げられたとケリー氏は話している。

 それなのに、今回の日産の社内調査では、西川氏がSAR行使日の後ずれによる利益の上積みを知らなかったと結論づけた。これでは、追及が甘いとしか言いようがない。

「4700万円もの明細を知らなかったのは不自然です。日産は社内調査でケリー氏に話を聞こうとせず、聞く気もなかったのではないか」(郷原弁護士)

 社内外の信頼が損なわれるなか、足元の経営が厳しくなっている日産は大規模なリストラに踏み切る。大株主のルノーやバックにいる仏政府は、経営統合で日産を傘下におさめようと狙っており、日産の社内混乱で経営関与を強めてくる可能性がある。トップに誰が就任しても、いばらの道が待ち受けている。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2019年9月27日号