私は数カ月前に、自民党の幹部数人に「もしも本気で憲法改正をするつもりならば、自民党の議員たちがみんな選挙区に行って、有権者に向けて、憲法改正することで具体的にこの国のこういうところがよくなる、国民の生活がこのようによくなる、とわかりやすく説明、説得すべきだ。ところが、自民党議員たちを見ていると、誰もが憲法改正から逃げているようだ。現に私が議員たちに問うても、誰も満足には答えてくれない。これでは、憲法改正などできるわけがないではないか」と真剣に問うた。答えは返ってこなかった。

 それ以上に心配なこともある。

 10月に消費税が増税になると、私は、景気が落ち込むのではないかと危惧している。経済の専門家でも危惧している人間が少なくない。

 ところが、経済再生相であった茂木敏充は外相となり、経産相であった世耕弘成は参院幹事長となった。そして、新たに経済再生相となったのは西村康稔、経産相になったのは衆院議院運営委員会与党筆頭理事の菅原一秀である。経済の専門家たちは、なぜ西村・菅原をこの重要な担当相にしたのか、安倍首相の思惑が理解できないと顔をしかめている。私も同じ思いであり、いったいどうなるのか大いに心配である。

週刊朝日  2019年9月27日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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