テレビショッピングは消費者にとっては、いい商品を安く購入できていいことずくめのように思えるが、価格設定に「からくり」がある場合もあり、注意が必要だ。

 テレビショッピングの番組を見ていると、「今日だけの特別値引き価格」と視聴者を誘うことがある。しかし、翌日以降の通常価格に実態がなく、消費者庁の処分を受けた事例もある。消費者庁が今年3月に景品表示法に基づき課徴金納付命令を出したのは、業界大手のジュピターショップチャンネルが番組で「40型テレビ」と「ずわいがに」を販売したケース。

 40型テレビの販売では17年3月20日の放送日だけ51%オフの10万7900円とし、翌日以降は通常価格22万4640円に戻るとした。実際には通常価格の期間は3日間だけであり、他社の販売する同テレビは15万円を下回るものが複数存在し、同社の特別値引き価格を下回るものもあったという。

 ずわいがにの販売では16年12月13日の放送日だけ32%オフの9800円としたが、翌日以降の通常価格1万4580円での販売は2日間だけだった。消費者庁が課徴金を算定する際に基準とした商品の販売実績は、テレビが8800万円超、ずわいがにが4億2364万円超もあった。

 こうしたテレビショッピングでの「今だけ安い」といった販売手法については、前述した「プロモーションだから特別に安くしている」という消費者にメリットがあるようなケースだけでないという。村山さんは「売り手は、消費者に購買に向けて次の行動をさせないといけないのです。確実に商品の購買に結びつけるためには、急がせないといけないのです」と話す。

 例えば、いったんテレビから離れて買い物などに出かけてしまうと、番組を見ているときには「戻ってきてから申し込もう」と思っていても、帰ってきた時点で忘れていることや欲しい気持ちが薄れていることが多い。番組放送中やその直後に申し込まなかった場合、購買に結びつくケースはほとんどないと考えたほうがいいだろう。売る機会を逸しないために、「今だけ」とうたっているのだ。

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