今年限りで生産終了となる日産自動車の「キューブ」(同社提供)
今年限りで生産終了となる日産自動車の「キューブ」(同社提供)

 車に詳しくない人でも、この名前はピンとくるのではないだろうか。日産のコンパクトカー「キューブ」。初代モデルの発売から21年、車高の高さが生む広々とした室内空間が魅力の一つで、その名が示す立方体のような車体は街中でも目を引く人気車種だ。これが今年限りで生産終了となるという。どんな背景が?

 カーライフ・ジャーナリストの、まるも亜希子さんは、生産終了の知らせに驚いたという。

「今のモデルで10年経っていたので、そろそろてこ入れしないと厳しいんじゃないか、とは思っていましたが……。まさか無くなるとは思っていなかったです。来年あたり次のモデルが出るといううわさがありましたし、一時代を築いた車ですから」

 1998年に初代、2002年に2代目モデルが発売。08年から現行の3代目モデルが販売されていた。昨年度のグッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞し、「乗る人のアイデンティティーやステータスの表現手段としての車ではなく、移動手段としての車との異なる付き合い方が提案されている」と評された。

「コンパクトカーの中では、自分の部屋のようにくつろげるマイルーム感覚を一番最初に打ち出して成功した小型車です。(2代目モデルの)キャッチコピーは『Cube.My room.』。車の中でくつろげる、リラックスできる、というのは斬新でした。若い世代に車が売れない中でも、キューブだけは若者に支持されていた印象です」(まるもさん)

 くつろぎを生んでいたのは単なる広さだけではなかった。

「コンパクトカーはどうしても車内が狭くなるのですが、キューブの車内は部屋のように四角い空間で、シートもふっくらしてソファのよう。ほかの車ではあまり使われないベロアのような素材も使ったりしていて、カウチソファみたいでした」(同)

 それだけ快適な車がなぜ生産終了に――。

 日産の広報に理由を聞いてみると、「年明けから適用される内部突起の法規に対応できないため」との回答。

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安全性とデジタルの両立厳しく?