“家宝”の換金は難しい! 面倒くさすぎる古美術を売るステップ (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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“家宝”の換金は難しい! 面倒くさすぎる古美術を売るステップ

連載「出たとこ勝負」

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黒川博行週刊朝日#黒川博行
黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する (写真=朝日新聞社)

黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する (写真=朝日新聞社)

※写真はイメージです (Getty Images)

※写真はイメージです (Getty Images)

 ギャンブル好きで知られる直木賞作家・黒川博行氏の連載『出たとこ勝負』。今回は家宝を売る難しさについて。

*  *  *
 馴染(なじ)みのスナックのマスターから電話があった。店のお客さんが日本画の掛け軸を持っていて、それを売るにはどうしたらいいか、古美術をめぐるコンゲーム小説を書いているわたしに訊いて欲しいのだという。

 ──その掛け軸て、誰の作品?

 ──○○とかいうてた。 作者名を聞いたとたん、あかんな、と思った。○○は大家だが、その作品のほとんどは偽物だから。

 ──そのお客さんて、美術品のコレクターなん?

 ──ちがう。商店街の佃煮(つくだに)屋さんや。

 ○○のほかにも掛け軸が数点、お爺(じい)さんの代から家にあるらしい、とマスターはいい、

 ──写真を預かってるし、こんど来たときに見てくれるかな。

 ──見てもええけど、鑑定なんかできへんで。

 美大を出て、十年間、美術教師をし、よめはんが日本画家だから、絵のよしあしは分かる。全体構成とデッサンとオリジナリティーだ。構成はプロの絵描きが何十年もかけて培ったセンスであり、その基本となるデッサンの巧い下手はひと目で分かる。

 ──それと、もうひとつ、絵とか骨董品を売るのはすごいむずかしい。そのあたりのことを佃煮屋さんに説明するから、本人がおれに電話してくれるようにいうてくれんかな。

 ──電話番号、教えてもええんかいな。

 ──ああ、かまへん。

 そうして、三日後に佃煮屋さんから電話がきた。わたしはマスターから話を聞いているといい、

 ──テレビの骨董鑑定番組とか見ますか。

 ──よう見ます。

 ──たとえば、出品者の掛け軸が百万円と鑑定されたとき、「これを売ってハワイへ行きます」とかいいますよね。あれ、百万円で売れると思いますか。

 ──九十万円ぐらいですか。

 ──誰が買います。

 ──さぁ、誰やろ。

 ──普通、画廊とか古美術商の仕入値は売値の二、三割です。理由は簡単で、画廊が作品を買いとったとたんに、その作品は在庫になる。そう、画廊はいつも不良在庫を抱えるリスクをもって商売してるんです。


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