これに対し、病院を運営する学校法人「聖路加国際大学」は、横山医師の問題点を指摘する。循環器内科の臨床工学技士や看護師ら10人を超えるスタッフから、横山医師から長期間、複数回のパワハラを受けたという申告があったという。高圧的な言動をしないよう院長らが繰り返し指導を行ってきたが、改善が見られなかったとしている。

 院長の発言についても、聖路加国際大学側はこう説明する。

「福井院長が行った退職勧奨は事前に糸魚川順理事長にも了解を得ていることで、法人として適切に判断した結果です。人権委員会でも、院長の言動は問題はないと判断されています。『ここ以外のところを見つけるという意思があったら人権委員会へのアクションは踏まないが、でもその気がないようであればそのようにします』と院長が言ったのは、温情として客観的事実を伝えたにすぎず、心理的圧迫を加えるものではありません」

 このように横山医師と病院側の主張は全面的に対立している。裁判では双方が正当性を訴えるとみられる。

 名門病院で発覚した今回の騒動。病院長と医長という幹部同士が対立する構図は、リアル”白い巨塔”と言えるかもしれない。不安を感じるのは、双方のバトルから置き去りにされた患者やその家族。裁判で決着がついたとしても、病院への信頼回復は簡単ではなさそうだ。
(本誌・上田耕司)

※週刊朝日オンライン限定記事

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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