スーパーマリオがコインを探してブロックをどつき回すように、身体中の垢を一寸たりとも逃すまいとおばちゃんはこすり続ける。「どこかに1UPキノコがあるはずだ! どこだどこだ、キノコはどこだ!?」。おばちゃんの額の汗が私の背中に落ちる。もうどうにでもしてくれ。

 消しゴムのカスのようなおのれの垢を見つめながら、お伽話の『あかたろう』を思い出す。お爺さんとお婆さんの垢から出来た男の子の話。

 夜はメインステージでフラガールのショーを観た。圧巻の腰の動き。あんなに速く人間の腰が動くとは!? 腰だけがすっぽ抜けてどっかに飛んでっちゃうんじゃないかと心配になるほど。あんなに腰を振って大丈夫なのか?

 それでもフラガールは笑顔笑顔笑顔。2泊3日で3回観賞。観すぎたかな。

 帰宅するとニュースで「政治家と女性アナウンサー結婚妊娠」を盛んに報じている。どうでもいいわいな。私の頭に浮かんだのは「あ・か・た・ろ・う。あかたろう」と微笑むクリステル。ああ、完全に休みボケ。過ぎたるは及ばざるがごとし。あれ、今回のお題はなんでしたっけ?

週刊朝日  2019年9月6日号

著者プロフィールを見る
春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

春風亭一之輔の記事一覧はこちら