実は、この15日の演説で耳目を集めたのはむしろ北朝鮮関連だった。「朝鮮半島が統一すれば、世界経済6位圏も展望でき、2050年ごろには国民所得7万~8万ドル時代が可能となる」「2032年ソウル平壌共同の(夏季)オリンピックを開催し、遅くとも2045年の光復100周年には平和と統一でひとつとなった国(One Korea)として世界に胸をはれるよう」など北朝鮮と協力した「平和経済」と「ワンコリア」を高らかに公言した。しかし、これも「米朝の対話再開の兆しも見えない中、あまりにも非現実的でロマン主義ではないかとされた」(別の韓国紙記者)。

 先の曹前秘書官の長官任命は、文大統領悲願の司法改革、積弊清算を推し進めるためといわれ、世論の反対を押し切っても強行すると見られている。

 文大統領自らの夢である積弊清算と北朝鮮との平和経済、そして、国民の自尊心は安保よりも上ということなのか。それとも、対日関係は今のままでも構わないというシグナルなのか。

 韓国ではボールは日本に渡ったとして日本が韓国に対し追加の経済措置をとるかどうかを注視している。

 日韓は振り上げた拳をこれからどう収めるのか。

 それにしても、GSOMIA破棄は北朝鮮が要求していたことでもある。こんな日韓を見て、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は高笑いしていることだろう。(ソウル=菅野朋子)

週刊朝日  2019年9月6日号