高校日本代表の合宿でともにアップをする星稜の奥川恭伸(右)と大船渡の佐々木朗希 (c)朝日新聞社
高校日本代表の合宿でともにアップをする星稜の奥川恭伸(右)と大船渡の佐々木朗希 (c)朝日新聞社

 今夏の甲子園の主役は、星稜(石川)の右腕・奥川恭伸(3年)だった。決勝の履正社(大阪)戦で4番・井上広大(3年)に3ランを浴びるなど5失点で敗れ、北陸勢初の全国制覇はならなかったが、スカウト陣の高評価は揺るがない。

 投球を視察したメジャー球団のスカウトが絶賛する。

「履正社戦も九回に153キロを出し、最後まで投げ切っている。潜在能力は非常に高く、フォームや球の質はドジャースの前田健太に近い。これから経験を積んでいけば、将来メジャーでも2ケタ勝利を挙げられる可能性を秘めている」

 奥川の評価は以前から高かった。今春の選抜大会では、今大会初優勝の履正社と1回戦で対戦し、17奪三振で完封。力でねじ伏せた投球は圧巻だった。

 だが、この夏を迎えるとき、注目を浴びていた「主役」は最速163キロ右腕の大船渡(岩手)・佐々木朗希(3年)だった。豪速球に加え、スライダーも140キロを超えるという異次元の投球スタイル。岩手大会決勝で疲労を考慮して登板せずに敗退したが、実力はずば抜けている。4月にあった高校日本代表候補の合宿では、「あいつはモノが違う」 と他の選手があぜんとするほどの球を投げ込んでいた。

 しかし、今夏の甲子園で、奥川は佐々木に引けを取らないパフォーマンスを発揮した。1回戦の旭川大(北北海道)戦で完封。3回戦の智弁和歌山戦では14回を投げて23三振を奪い、今大会初のタイブレークを制した。準決勝の中京学院大中京(岐阜)戦でも7回無失点。準決勝まで4試合に登板し、32回3分の1を投げて自責点ゼロだった。

 前出のメジャーのスカウトは、こう分析する。

「佐々木は、エンゼルスの大谷翔平に近い。まだ体が細く、体力をつけなければいけないが、爆発力がある。奥川は投球だけでなく、打者との駆け引き、フィールディング能力と総合力が高い。2人はこの世代で飛び抜けている」

 奥川は進路を表明していないが、プロ野球は12球団OKの姿勢という報道が流れている。体力や変化球の精度など、課題もある。前田や大谷のように、日本で結果を残してから数年後にメジャー挑戦するほうが合っているかもしれない。

 いずれにせよ、今秋のドラフトで複数球団による1位指名は必至だ。奥川、佐々木のどちらを1位指名するか。各球団は最後まで頭を悩ませそうだ。(牧 忠則)
※週刊朝日 2019年9月6日号