高齢者の性問題を支援する4つの視点 (週刊朝日2019年8月30日号より)
高齢者の性問題を支援する4つの視点 (週刊朝日2019年8月30日号より)

 高齢者の「性」の問題が長寿化の中で近年浮かび上がっている。単身高齢者が性的欲求を満たしてくれる相手がおらず、人知れず悩むケースもその一つだ。ライター・澤田憲氏が現状と課題をリポートする

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 単身の高齢者も、夫婦とはまた違った性の悩みを抱えている。

 単身高齢者の場合、「性欲はあるが、満たしてくれる相手がいない」ことが大きな悩みとなる。だが、高齢期にパートナーを見つけることは容易ではない。

 厚生労働省の「平成28年度人口動態統計特殊報告『婚姻に関する統計』の概況」によると、15年時点の65歳以上の無配偶人口は約1178万人(男性約280万人、女性約898万人)。一方で、65歳以上の婚姻件数は男女合わせて1万4500件ほどしかない。つまり高齢期に新たなパートナーを得られる割合は0.1%(1千人に1人)だけということになる。もちろん未婚のまま交際している高齢者もいるが、ハードルが高いことには変わりない。

 ではどうすればいいのか。

 一般社団法人ホワイトハンズ代表理事の坂爪真吾さんは、2年前に『セックスと超高齢社会』(NHK出版新書)を上梓。障害者支援とともに、高齢者の性問題に関しても解決に取り組んできた。坂爪さんは、高齢者の性的支援の難しさをこのように語る。

「実は、高齢者の性的欲求を満たすサービスはすでに豊富にあります。私が取材した中では、1回数万円で若い女性と疑似恋愛できる交際クラブや、中高年向けのバスツアーに参加されている方もいました。また最近では『高齢者専用風俗』というのもあります。ただ、こうしたサービスがあることを知らない、または知っていても利用したがらない高齢者のほうが多いのです」

 坂爪さんは以前、高齢者専用風俗の女性スタッフに取材した際に、「自分みたいなじいさんが相手で嫌じゃないか」と気を揉む利用客が多くいることを知って驚いたという。その一方で、高齢者というカテゴリーでくくられるのを嫌がり、あえて高齢者向けサービスを敬遠する人もいるそうだ。

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