「早朝や夜間の人材が不足している」ことや、「高齢化が深刻で数年後が不安」と若い職員の不足を訴える事業者もいる。「人材の確保・育成・定着のための資金がない」といった声もあった。

 資金力のある一部の大手は人材を確保できても、多くの事業者は人手不足を解消しにくい。介護業界の関係者はこう指摘する。

「介護現場ではサービスの質が求められています。人材育成を含めて一定の投資が必要。大手ならローテーションを組んで職員を研修に参加させることもできますが、小規模な事業所ほど人のやり繰りは難しくなります。資金力のない事業者は経営環境がますます厳しくなります」

 さて、私たち入居者にできることは何か。老人ホームの淘汰(とうた)はますます進んでいく。監視するはずの行政も頼りにならない。大金を払って終(つい)のすみかを決めるときには、納得できるまで業者側に説明を求める。いったん入居しても、サービスが低下するなど問題があれば、すぐに家族や専門家に相談する。

 有料老人ホームの選び方について、東京都福祉保健局はこうアドバイスする。

 家族や友人らが訪ねやすいか、近くに商店街などが整っているか、立地に注意する。入居率やスタッフの平均勤務年数なども確認し、複数のホームで比較。赤字が膨らんでいないかどうかなど、経営状況も自らチェックしよう。不利な情報でもきちんと情報を開示するところが望ましい。

 いまは老人ホームがいつ閉鎖されてもおかしくない時代。最後まで自分のことは自分で守るという姿勢が求められている。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2019年8月30日号