「正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫など、手術で認知機能低下が改善できる脳の病気も少なくありません。また白質病変が見つかっても、禁煙や高血圧の治療を行うことで増大を抑えることができます」

 その上で、高齢者の脳検査を義務付ける体制づくりが必要だと話す。

「脳画像を見れば事故を起こす可能性が高いかどうかがある程度わかり、有効な対策を講じることができる。その際の検査は保険診療にして、全国の病院が参入しやすくすることも重要です。高齢化が世界最速で進む日本だからこそ、世界のお手本になれる国の政策として進めるべきです」

 認知症の疑いがある高齢ドライバーにリハビリをしてくれる病院は、現在のところ愛宕病院だけだ。だが、高知まで通えない人で、どうしても運転が必要な人はどうすればよいのか。

 高知工科大学名誉教授で交通工学が専門の谷靖彦氏(78)は、運転する地域や時間に自ら制限を設けることを提案する。

「例えば道路事情がよくわかっている範囲に限り、昼間の交通状況のよいときに運転する。そうすれば余裕が生まれます。焦って運転ミスを起こさないためには、急いでいる車が後ろから来たときには道を譲ることも大切です。同乗者がいると事故が減るとのデータもあります」

 熊谷氏は、高齢者が事故を起こさないヒントを「高齢者運転八策」(下記)としてまとめている。また、地域限定運転の実効性を高めるために、GPSを内蔵したタブレット端末で使えるアラーム装置を作った。

【高齢者運転八策】
1.交通ルールを守り安全運転を行います(安全運転)
2.体調の悪い時は運転をしません(体調制約)
3.道路事情をよく知った範囲しか運転しません(地域限定)
4.夜間や朝夕のラッシュ時は運転を控えます(時間帯制約)
5.遠方へは公共交通を利用します(公共交通利用)
6.急いでいる車には道を譲ります(譲りあい)
7.極力同乗者と運転します(同乗者効果)
8.イライラせずゆとりをもって運転します(ゆとり)

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