リハビリは週2回の来院でそれぞれ1、2時間行う。自動車教習所で実車を使った運転評価も実施している。1カ月で合計8回のリハビリをして必要な認知機能が上がらなければ、免許返納か停止となる。返納する必要がない人でも、不安な人はリハビリを受けることができる。

 効果はどうか。

「劇的に運転能力が改善することはないが、やる気があって続ける人は確実に認知機能と安全に対する意識が向上し、運転行動が変化しています」(沖田氏)

 事実、今まで自動車運転外来を受診した26人のうち13人がリハビリを受け、うち9人は免許更新ができた。残り4人のうち2人は自主的に免許を返納し、日常生活に支障があることから認知症と評価されて免許停止となったのは2人だけだったという。

 もちろん、認知機能や運転機能を維持するには継続が必要だ。

「途中でリハビリをやめれば機能は落ちてしまう。そのために続けてもらっている人が多い。患者さんには3カ月か半年に1度は診察を受けてもらい、認知機能の低下が進んでいないかを確かめるようにしています」(同)

 効果が出ずに免許を返納する場合でも、検査の意味はある。

「リハビリをした結果データを示せば、自分には正常な運転は無理だとあきらめもつく。大切なのは免許を取り上げることではなく、納得して返納してもらうことです」(朴医師)

 運転免許停止になってしまった人は生活に困るが、地域包括支援センターへの紹介も行う。認知症と診断されれば介護保険の適用を受け、介護サービスの活用もできるからだ。

 自動車運転外来の費用は、保険適用前で初診料とMRIを含む認知機能検査で約3万7千円。リハビリは月8回で約3万円だ。

「『認知症の疑い』だけでは保険が適用されないので、他の病気の治療と合わせることで保険適用になり自己負担額を抑えることができる」という。

 高齢者の事故を防ぐためには、認知機能の低下をどう防ぐかがカギだ。朴医師は、まずは専門医の診察を受けることを勧める。

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