1年生ながら強豪・智弁和歌山の4番に座った徳丸天晴が、今秋のドラフト1位候補、星稜(石川)の右腕エース・奥川恭伸に完敗した。17日の第101回全国高校野球選手権大会3回戦。目標にしていた全国制覇には届かなかったが、決意を新たにする大舞台となった。
「どんどん振っていけ」
先輩たちからそう言われていた。
だが、積極的にバットを振った結果、5打数無安打、3三振。全ての打席を3球で打ち取られた。
「まっすぐだと思って振ったら、スライダーのボール球だった。積極的にいくのはよかったけれど、ボール球に手を出したら打てるはずがない。ただ、これまでこんなに振らされることはなかった。全く自分のバッティングができなかった」
口数は少なかった。
中学通算22本塁打のパワーヒッター。春の県大会から4番デビューした。中谷仁監督も、こう太鼓判を押していた。
「彼しかいない」
実際、和歌山大会では18打数9安打、7打点。打率5割と大暴れした。
4番打者のプレッシャーはなかったという。
今のチームの3年生にも、甲子園を1年時から経験する二塁手・黒川史陽、捕手・東妻純平、遊撃手・西川晋太郎がいる。そんな先輩たちが、いつも声をかけてくれたからだ。
試合後、智弁和歌山の選手たちは涙に暮れた。
14回で3安打1得点に抑えられ、23三振を喫した。延長タイブレークの激闘の末、サヨナラ本塁打で敗れた。ロッカールームに引き上げるのがやっとだった。
主将の黒川も必死に声を絞り出し、報道陣からの質問に答えていた。
ただ、その先輩の背中が、徳丸には大きかった。
「3年生に教えてもらったことは絶対に忘れません」
初めての甲子園で待望の本塁打は出なかった。だが、徳丸は、こう決意した。
「甲子園の歓声はすごかった。良い経験をさせてもらえた。チームの勝利に貢献できるバッターになりたい」
次こそ目標である日本一をつかみ取る。(本誌・田中将介)
※週刊朝日オンライン限定記事