延長十四回表、智弁和歌山の攻撃を抑え、喜ぶ星稜の奥川 (C)朝日新聞社
延長十四回表、智弁和歌山の攻撃を抑え、喜ぶ星稜の奥川 (C)朝日新聞社
智弁和歌山戦で先発した星稜の奥川 (C)朝日新聞社
智弁和歌山戦で先発した星稜の奥川 (C)朝日新聞社

 プロ注目の右腕・星稜(石川)の奥川恭伸が17日、第101回全国高校選手権大会3回戦の智弁和歌山戦で、延長14回を完投してサヨナラ劇を呼び込んだ。今大会初のタイブレークで、23三振を奪った。相手の智弁和歌山は奥川の球をどう見たのか。

 奥川はしなやかで力みを感じさせないフォームで、序盤から実力を見せつける。150キロを超える直球に多彩な変化球で、五回までに10個の三振を奪った。

「直球の切れと球威、変化球とのコンビネーションはこれまでに見てきた投手とは一段も二段も違った」

 奥川をこう評するのは、智弁和歌山の捕手・東妻純平だ。この日、4三振を喫した。

 星稜が四回に1点を先制した。ただ、絶好調に見える奥川を目にしても、智弁和歌山ベンチに悲壮感はなかったという。5番・根来塁はこう振り返る。

「(中谷仁)監督が『お前らなら絶対打てるからな』と常に声をかけてくれていたから、プラス思考でいられました。2巡目、3巡目となっていけば(タイミングが)合ってくると信じていました」

 六回、敵失と死球で2死一、二塁とすると、この試合で初めて、“魔曲”と呼ばれるチャンステーマ「ジョックロック」がアルプススタンドで鳴り出した。音量は一層大きくなり、応援に背中を押されるように、3番・西川晋太郎が右前に適時打を放ち、同点に追いついた。

 この日、打席に立った選手で唯一、三振がなかったのが西川。奥川についてこう話す。

「奥川君とは今大会が始まる前から、ずっと対戦したいと思っていました。対戦が決まって、昨夜はずっとワクワクしていました。ビデオで何度も(奥川の)投球を見てイメージトレーニングをしていたので、絶対に打てるという自信はありました」

 ただ、西川も他の打席ではすべて外野フライに打ち取られた。打線は3巡目、4巡目に入っても、奥川をとらえられない。第1打席から4打席連続で三振を奪われた佐藤樹は涙が止まらない。

「時折来る甘い球を仕留められませんでした。一発で仕留められるかが(今春の)選抜からのテーマだったのに、(星稜の捕手)山瀬(慎之助)君にうまくリードされて、空振りしてしまった」

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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変化球の切れは想像以上