※写真はイメージです
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 参院選での与党勝利を受け、安倍晋三首相は改憲論議の進展に意欲を示し、野党は反発を強めています。「週刊図書館」の夏休み読書特集では、この機会に憲法について考えてみようと、絵本から専門書まで、様々な分野から、おすすめの3冊を選んでもらいました。

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■斎藤美奈子(文芸評論家)
(1)『オールカラー マンガで楽しくわかる日本国憲法』川岸令和監修 ナツメ社 1200円
(2)『日本人のための平和論』ヨハン・ガルトゥング著 御立英史訳 ダイヤモンド社 1600円
(3)『青い山脈』石坂洋次郎 小学館P+D BOOKS 600円

 安倍政権が改憲するぞするぞと脅したおかげで唯一よかったのは、憲法を学ぶための本が急増したことだろう。子ども向けの憲法本もすっごく増えた。自民党がウェブ上で改憲プロパガンダのマンガを公開する今日、良心的な児童書や参考書の増加は心強い。

 その中でも特に感心したのが『オールカラー マンガで楽しくわかる日本国憲法』だ。この本の特徴は条文の理念や歴史的経緯まで解説に入れていることで、たとえば9条の解説は<先のアジア・太平洋戦争では、日本は世界の多くの国々を侵略しました>からはじまる。多くの若者が命を落とした学徒動員、民間人を巻き込んだ沖縄戦、広島と長崎に落とされた原爆。これらの反省から<これから先、二度と戦争をしないという、国と日本国民の強い決意として、第9条が定められたのです>。

 血の通った解説に加えマンガでは箒を手にした子どもがいう。<このホウキはどんな武器より強い><戦いを放棄しているからな>。護憲派も改憲派も憲法の全文を読んでいる人は意外に少ないという現実。お子様とごいっしょにどうぞ。

 現在の改憲論は、東アジア情勢の変化が背景にあるという。だが安倍政権の安全保障政策は正しいのか。『日本人のための平和論』は「積極的平和」の提唱者でもあるノルウェーの社会学者の提言の書だ。

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