日本のテレビ報道界は、2003年3月20日に米軍が狂気のイラク攻撃を開始した発端が、その半年前の2002年9月8日にニューヨーク・タイムズのピューリッツァー賞受賞者、ユダヤ人女性記者ジュディス・ミラーが、根拠もない「イラクの核兵器開発」をあたかも事実であるかのように大報道した記事(フェイクニュース)であったことを知らないであろう。

 2006年のジョンズ・ホプキンズ大学などによる調査では、このイラク攻撃開始から3年後の2006年6月までの「イラク人の死者数は60万人以上」とされている。被害者はその10倍の数百万人に達するであろう。イスラム教徒に対するこの米軍の大量虐殺に怒って決起したイスラム教徒がテロリストに変貌し、テロ集団“イスラム国(IS)”が生み出され、難民・移民が大量発生して、全世界の混乱が続いているのである。

 ジュディス・ミラーが書いた当時の記事をいま読むと、ボルトンが北朝鮮の核兵器を非難している言葉とそっくり同じである。

 このように危険な戦争屋ボルトンが、北朝鮮に喧嘩を売って憎悪を煽(あお)っているというのに、日本のテレビ報道に出てきたコメンテイターは全員が、「北朝鮮非難」に終始し、ボルトンのオウムであった。

 こういう世界情勢も読めない人間たちが日本のテレビ報道に従事して、アジアに平和が訪れるはずがない。

 安倍晋三ときたら、トランプとゴルフをしてはしゃぎ回り、日本の海上自衛隊の艦艇にトランプを乗せて喜び、莫大な金をアメリカ軍需産業にみつぐ約束に明け暮れ、沖縄の軍事基地建設に熱中しているというのに、テレビ報道が一喝もしない。

 日本では、現在のマスメディアに対する信頼性が示すように、世界的にきわめて低い水準にランクづけされるほど、報道内容が落ちているのはなぜだろうか。2016年4月20日に国際ジャーナリスト組織である“国境なき記者団”(RSF─Reporters Sans Frontières)が発表した各国の報道機関のランクづけによると、この時に韓国は、朴槿恵(パク・クネ)政権がテレビ報道界を大弾圧していた最悪の時期だったので報道の自由度が「世界70位」というひどい評価を受けたが、その後は、報道界が決起して報道改革がスタートした。ところが日本は、韓国よりさらに低い「世界72位」という自由度であり、2019年になっても「世界67位」であった。これが、日本のテレビ報道に対する国際的な評価だという事実は、すべての日本人が認識しておかなければならないことである。

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韓国の民主化を引っ張ってきた主役