「山口くんは距離を置いたような発言をしているが、いまの公明党は反平和、反福祉の党に変貌してしまっている。いま、学会員の中で危機感が高まっています。野党陣営に三色旗を持ち込む人たちが現れたのは、昨年9月の沖縄知事選からです。『善人の沈黙は悪だ』と言って、声を上げ続けています。法律家である山口くんは、集団的自衛権の行使については筋金入りの違憲論者でした。やはり原点に立ち返るべきです。憲法論議に引きずられるようなことになれば公明党、学会内は大騒動です。血の雨が降ることを覚悟して、自民党と手を切るべきです」

 一方で、安倍首相が9条改憲へのアクセルを踏んだところで、空吹かしでしかないとの見方もある。

 政治ジャーナリストの野上忠興氏がこう話す。

「何かと『改憲』意欲を唱えるのは、日本会議はじめ右派勢力の支持をつなぎとめておくためでもあるのでしょう。ただ、安倍首相本人は“改憲の本丸”9条の攻略は難しいというのが本音だとされています」

 しかし、「憲政史上初の憲法改正を成し遂げた総理大臣」として歴史に名を残したいという野望は、おいそれとは捨てきれない。そこで安倍首相が目を付けているといわれるのが、退位した天皇の称号である「上皇」や、「後嗣(世継ぎ)」に関する条項の新設だという。野上氏もこう言う。

「憲法に明確化されていない上皇や後嗣絡みの条文を書き加えようというわけです。“上皇条項”など天皇条項の改正ならば、共産党以外の野党は反対しにくいだろうと踏んでのことと、首相周辺も話しています。11月には桂太郎を抜いて通算在職日数で、憲政史上最長になることを楽しみしているとも聞きます。しかし、ただ“長い”だけでは納得できないようで、どんな形であれ憲法改正を成し遂げることに強いこだわりがあるようです」

 前出の憲法学者・小林氏に、この「上皇条項」について見解を聞くと、こう言い捨てた。

「皇太子も書かれていないのに、上皇が憲法事項であるわけがない。何が何でも憲法に筆を入れたいと血迷っているから、そういう話が持ち上がるのでしょう」

 すべては自分のレガシー作りのためなのか…。
(本誌・亀井洋志)

※週刊朝日オンライン限定記事