社内独立を吉本興業に認めさせた明石家さんま(C)朝日新聞社
社内独立を吉本興業に認めさせた明石家さんま(C)朝日新聞社

 吉本興業は8月8日、芸人と反社会的勢力との闇営業問題などをめぐって設置した「経営アドバイザリー委員会」の第1回を東京・新宿の同社東京本部で開催した。委員会からすべての芸人らの意向に合わせた契約形態をするよう提案された。その結果を受けて、共同確認書をすべての芸人らと交わし、従来のマネジメント契約に加えて、専属エージェント契約という形態を導入すると発表した。吉本社員はこうため息をつく。

【写真】落語家・桂小軽さん

「もとは闇営業問題だったのが、吉本興業の経営やコンプライアンス芸人のギャラ、契約にまで広がり、いろんな芸人が絡んできて、焦点がぶれて収拾がつかなくなってしまった。肝心の宮迫博之、田村亮ら闇営業にかかわった芸人が今後、どうなってゆくのか、なかなか定まらない状態です」

 吉本興業に約40年在籍したが、2015年に大阪地検特捜部に逮捕(不起訴)されたのを機に、同社を辞めた落語家の桂小軽さんはこう話す。

「ここまでこじれたら、もう前のままでは無理でしょうな」

 小軽さんはかつて島田紳助が「芸人の組合を作ろう」と呼びかけ、潰されたこと、人気漫才コンビだった大平サブロー・シローの独立、復帰など吉本興業の「お家騒動」を目の前でみてきた。

「これまでの吉本興業は、大平サブロー・シローのように一度、弓を引いて去っていく人間には、冷たかった。仕事も干した。けど、宮迫(博之)君の場合、自分で謝罪したいと言っていたのを吉本が止めたと言っている。世論も同情的なので、宮迫君や田村亮君らを円満に戻すしかないと思います」

 そして小軽さんは解決法で「名案があるんや」と続ける。

「古い吉本興業の芸人なら、たいてい知っていますが、明石家さんまが会社ともめたことがありましたわ。フジテレビのひょうきん族で、さんま人気が沸騰した時期やった。さんまは会社のギャラだけでなく、吉本のあり方や待遇に不満があり、やめたいと言い出した。人気者、さんまに辞められると、経営面だけでなく、会社のイメージも悪くなる。記憶では、当時の吉本の最高幹部2人がさんまと話し合おうとゴルフをすることになった。プレーが終わって、白紙の小切手を2人がさんまに渡し、『なんぼほしいんや、好きなだけ書いてくれ』と説得にあたった。最高幹部らは本当にさんまが億単位で書いてくると覚悟したが、そうはならなかった。さんまは『ギャラも大事ですが、会社の待遇、あり方とか変えてほしい。吉本が嫌いで出たいというじゃありません』と言ったそうです」

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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