名古屋市長の河村たかし氏(C)朝日新聞社
名古屋市長の河村たかし氏(C)朝日新聞社
愛知県知事の大村秀章氏(C)朝日新聞社
愛知県知事の大村秀章氏(C)朝日新聞社

 愛知県で開催されていた国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」の中止が波紋を呼んでいる。

 同会場の愛知芸術文化センター(名古屋市東区)で「ガソリンだ」と言って警官に液体をかけたとして、愛知県警東署は8月7日、公務執行妨害の疑いで年齢不詳、室伏良平容疑者(自称)を現行犯逮捕した。室伏容疑者はヘルメットに作業服姿で他の男2人と会場を訪れ、「津田(芸術祭の芸術監督を務める津田大介氏)を出せ」などと騒いだという。

 騒動の発端は、名古屋市長の河村たかし氏が従軍慰安婦を象徴した「少女像」が展示されたことに反発して「展示を即刻、中止してほしい」と要請したこと。

 愛知県知事の大村秀章氏が河村市長の発言後、抗議が相次いだこともあり、主催者らと相談して中止すると発表した。だが、その余波が政治問題に発展している。
 
 大村氏が河村氏の発言に対して、記者会見で「憲法違反の疑いが極めて濃厚ではないか」「憲法21条の表現の自由は守られなければならない。河村さんは胸を張ってカメラの前で発言している。いち私人が言うのとは違う。公権力を行使される方が、この内容はよい、悪いと言うのは、憲法21条のいう検閲と取られてもしかたがない」「裁判されたらただちに負けると思う」と反論した。

 芸術祭の問題で愛知県知事と名古屋市長が激突し、問題がさらに拡大した。大村氏と河村氏はもともとは蜜月だった。09年に衆院議員から名古屋市長に転身した河村氏は、11年に衆院議員だった大村氏を誘い、愛知県知事選、名古屋市長選のダブル選挙で圧勝した。

 だが、その後は対立するようになり、最近でも名古屋城の木造建て替え問題では大村氏が「河村氏は裸の王様だ」と批判。ますます対立が深まっていた。そんな中に芸術祭の問題がぼっ発した。

 芸術祭は実行委員長が大村氏で実行委員長代理が河村氏。総事業費約12億円で、愛知県が約6億円、名古屋市が約2億円を支出。文化庁から愛知県に約7829万円の補助金が充てられるという。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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名古屋市長の河村氏の言い分